ドイツ21点差、セルビア19点差の“完敗”…それでもバスケ日本代表に富樫勇樹(30歳)がいる信頼感「声出しが恥ずかし」かった男はなぜ変わったか

AI要約

バスケ日本代表が強豪との最終強化試合を終え、パリ五輪に向けてチームの進化を感じる

選手たちの成長とチーム作りについて、ヘッドコーチの考え方やキャプテンの変化を振り返る

チームのために変われる選手として注目の富樫勇樹のキャプテン就任エピソードなど

ドイツ21点差、セルビア19点差の“完敗”…それでもバスケ日本代表に富樫勇樹(30歳)がいる信頼感「声出しが恥ずかし」かった男はなぜ変わったか

 パリ五輪開幕を控え、ドイツ、セルビアと強豪国との最後の強化試合を終えたバスケ日本代表。世界の壁の高さを改めて感じる結果ではあったが、それでも苦しい時こそチームには頼れるベテラン選手たちがいる。富樫勇樹と比江島慎――日本バスケ界の顔役として、彼らはこれまでいかに進化し、戦ってきたのだろうか。《全2回の1回目/つづき(比江島慎編)を読む》

 7月20日、バスケットボール日本代表が、ベルリンで行われたドイツ代表との強化試合に21点差で敗れたことで、悲観的な未来を予想する人もいたかもしれない。奇しくもドイツは、パリ五輪の初戦で対戦する相手でもあったからだ。

 ただ、これがオリンピックにおけるバスケのレベルなのだ。サッカーの男子などよりも少なく、わずか12カ国しか出場できない。必然的に、ハイレベルな戦いになる。

 それでも、結果にしか目を向けないのであれば、進歩はない。大会前の今はプロセスをしっかり見ていかないといけない。

 前回の東京オリンピック終了後に、女子の日本代表を率いていたトム・ホーバスが男子のヘッドコーチ(HC)に就任してから、大きく変わった選手が2人いる。

 今大会のメンバーで最年長の比江島慎と2番目に年齢の高い富樫勇樹だ。

 普通に考えれば、年齢やキャリアを重ねた選手ほど変わるのは難しい。にもかかわらず、現在の代表チームで年齢が上の2選手が大きく変わったところに、このチームの進化の跡は見られる。

 6月に発売されたホーバスHCの書籍『スーパーチームをつくる! 』(日経BP)から2箇所ほど引用しながら、彼らの話を進めていこう。

 件の本にはホーバスHCのチーム作りの根幹を示すこんな一節がある。

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 私の好みや、過去の実績は関係ありません。チームが必要としている能力を持っている選手かどうかを公平な目でジャッジします。迷ったときは、その人のキャラクターを見ます。そして、チームのために変われるかを聞きます。

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「チームのために変われる」選手であることを、誰よりも体現しているのがキャプテンの富樫だ。

 富樫は、所属する千葉ジェッツでは代表で大役を任される前年にプロ入り後初めてキャプテンを任されていた。

 しかし、当時は気乗りしていなかった。それを示す2つのエピソードがある。

 まず、一度は依頼を断っている。ただ、当時のジェッツを率いていた大野篤史HCから「既存のキャプテン像に合わせる必要はないから」と言われ、ようやく引き受けたほどだった。