暗黒物質検出器「XENONnT」が稀なニュートリノ衝突現象の観測に成功

AI要約

国際共同実験XENONコラボレーションが、暗黒物質を検出する最新の装置XENONnTで太陽から放出されるニュートリノによる信号を初めて捉えた。

XENONnTは高感度の検出装置であり、地球外からのニュートリノによる信号を検出する能力を示している。

暗黒物質の実在を証明し性質や正体を解明するための研究が行われており、XENONコラボレーションはその一環として活動している。

暗黒物質検出器「XENONnT」が稀なニュートリノ衝突現象の観測に成功

宇宙には「暗黒物質(ダークマター)」という、重力でのみ存在を知ることのできる物質が大量にあるとされています。暗黒物質は普通の物質と極めて稀に相互作用する可能性があるため、原子核と暗黒物質との衝突で発生する信号を捉える検出器が世界中に設置されています。しかし正しい観測のためには、無関係の信号であるノイズを除去する必要があります。

国際共同実験「XENON(ゼノン)コラボレーション」は、液体キセノンで暗黒物質を検出する最新の装置「XENONnT(ゼノンエヌトン)」にて、太陽から放出される素粒子「ニュートリノ」が原子核と衝突する形式の1つである「ニュートリノ‐原子核コヒーレント弾性散乱(CEvNS)」に由来する信号を検出したと発表しました。

地球の外に由来するニュートリノによるCEvNSを捉えたのは世界で初めてのことです。この結果から、XENONnTは小型の装置の割に、ニュートリノというノイズに対して非常に感度が高い検出装置であることを示しています。同時に、 “ニュートリノの霧” と表現される宇宙全体のニュートリノ観測にも生かせることを示しています。

宇宙には、重力でのみその存在を知ることができ、光などの電磁波と相互作用しない(吸収も反射しない)ため、直接見ることのできない「暗黒物質」が大量に存在します。銀河の回転速度や宇宙の大規模構造から、暗黒物質の存在は確実視されていますが、その正体はよく分かっていません。

ただし、暗黒物質は普通の物質と “全く” 相互作用しないのではなく、 “ほとんど” 相互作用しないという予測があります。裏を返せば、極めて稀ながら普通の物質と相互作用をすることになるため、この稀なイベントを捉える方法で暗黒物質の実在を証明するだけでなく、性質や正体を明らかにしようとする試みがあります。

イタリアのグラン・サッソ国立研究所では、暗黒物質を直接検出する国際共同実験「XENONコラボレーション」が行われています。これは低温で液化した貴ガス元素「キセノン」を検出器付きのタンクに貯め、キセノン原子核と暗黒物質が衝突した時に発生する稀な信号を検出しようとする試みです。実験名のXENONは、キセノンの英語名Xenonに由来しています。

XENONコラボレーションは2006年に始まり、現在では第4世代の検出装置「XENONnT」が稼働しています。XENONnTではこれまでの装置で最大となる5.9トンの液体キセノンが維持され、ノイズとなり得る微量の放射性物質の除去や中性子の監視が行われています。また、ノイズの源となる外部からの中性子やミュー粒子の遮断のために、装置自体が700トンの水で満たされたタンク内に入れられています。