超巨大電波望遠鏡「SKA」が予言する人類の寿命…宇宙物理学者が「人類は今後100年間生き残れるかどうかわからない」と発言するワケ

AI要約

宇宙と人類の未来について、宇宙物理学者や天文学者の視点から、地球に接近する天体や人類全体の安全保障に関する研究が進んでいる。

リース博士のCSER設立など、現代の脅威として最先端技術によるテロや生物兵器の恐怖が警鐘を鳴らしている。

人類全体の安全保障を考える体制の整備が急務であることを強調している。

超巨大電波望遠鏡「SKA」が予言する人類の寿命…宇宙物理学者が「人類は今後100年間生き残れるかどうかわからない」と発言するワケ

静けさに満ちた不変のものというイメージだった宇宙も、20世紀になり、おどろくほど動的なことがわかってきた。また、絵空事と考えられていたUFOや宇宙人についても、2020年にアメリカ国防総省がUFOの存在を公式に認め動画を公開するなど、新たな展開が起きている。知っているようで知らない宇宙の姿を、太陽研究の第一人者である柴田一成氏の著書『太陽の脅威と人類の未来』(角川新書)から一部抜粋して紹介する。

前編『戦争に結びつく技術を開発してしまったときどうすればいいのか…天文学者が映画『オッペンハイマー』を見て感じたこと』

私の敬愛する宇宙物理学者に英国ケンブリッジ大学のマーティン・リース博士がいます。銀河形成や銀河中心の巨大ブラックホールの理論で先駆的な業績を挙げた世界的な宇宙物理学者です。彼は同僚の故ホーキング博士たちと共に、2012年、CSER(生存リスク研究センター)という一風変わった名前の研究センターを立ち上げました。

目的は人類の絶滅リスクを研究することです。いわば人類全体の安全保障が研究テーマであるといっていいいかと思います。

ちょうどそのころ、私たち京大花山天文台の研究グループは、太陽とよく似た恒星の観測から、太陽でスーパーフレアが起きる可能性が否定できないことを発見し、もし起きれば人類全体にとって大災害となることに気が付きました。

また、最新天文観測からは地球に接近する天体が続々と発見され、小惑星の地球衝突という宇宙由来の大災害の可能性が次第に明らかになってきています。

そういうことがあったので、天文学ではスーパーヒーローともいえるリース先生が立ち上げたCSERの設立に共感を覚えたのでした。

では、具体的にどんなことを実際に研究しようとしているのでしょうか。調べてみて、私はたいそう驚きました。

というのは、宇宙由来の災害や、地球起源の自然災害(地震、火山、台風など)、地球温暖化、核戦争の脅威などだけでなく、人間が引き起こすテロにも大きく注目していたからです。とりわけ強調されていたのは、人工知能、生物兵器、化学兵器、ナノマシン、などの脅威です。

「現代は、数人のテロリストが最先端技術を用いて全人類を滅ぼすことが可能な時代となっている。人類は今後100年間生き残れるかどうかわからない」というメッセージはショッキングでした(基本的な問題意識は、リース博士の著書『今世紀で人類は終わる?』〈草思社、2007〉にもあります)。

人類の長い歴史の中で、これまで様々な自然災害や戦争・侵略などの人為的災害がありましたが、人類全体にとっての脅威というのは、20世紀の半ばの核兵器の開発まではありませんでした。現在は、地球全体で核戦争をいかに回避するか、というのが重要な課題となっているのですがが、リース博士はそれに加え、あるいはそれ以上に恐ろしいのが、上記の最先端技術だというのです。

現代は、数人のテロリストが最強の毒をもつウイルスや細菌を人工的に合成して世界にばらまこうと思ったら、それが簡単にできてしまう状況にあります。そんなに予算もいらず、専門知識と大学にあるような実験室を用いるだけで、できてしまうのです。なんと恐ろしい時代になったものでしょうか。

コロナ禍のきっかけは、真偽は不明ですが、生物兵器研究ではないかと疑われるゆえんです。

リース博士は、こういう現代ならではの人類全体の危機を乗り越えるには、国家の安全保障という考え方だけでは到底対処できない、といいます。これは現在すでに我々が日々実感していることでありますね。

人類全体の安全保障を考える体制を早急に整備すべきだと私は考えます。