もしも、世界の「重力」が一定でないとしたら…人類を宇宙へ飛び立たせた「すごすぎる思考実験」

AI要約

古代ギリシャの原子論から、コペルニクスの地動説、ガリレオの望遠鏡、ニュートン力学、ファラデーの力線、アインシュタインの相対性理論まで、科学の大発見の歴史を追っている。

新刊『父が子に語る科学の話』では、親子の対話形式を通じて偉大な科学者たちの発見物語が紹介されている。

16~17世紀のフランスの科学者、マラン・メルセンヌによる、ガリレオの衛星に関する理論のまちがいについての驚きの発見が紹介されている。

もしも、世界の「重力」が一定でないとしたら…人類を宇宙へ飛び立たせた「すごすぎる思考実験」

古代ギリシャの原子論から、コペルニクスの地動説、ガリレオの望遠鏡、ニュートン力学、ファラデーの力線、アインシュタインの相対性理論まで、この世界のしくみを解き明かす大発見はどのように生まれてきたのか?

親子の対話形式でわかりやすく科学の歴史を描き出した新刊『父が子に語る科学の話』から、偉大な科学者たちの驚くべき発見物語の一端をご紹介しよう。

*本記事は、ヨセフ・アガシ著/立花希一訳『父が子に語る科学の話 親子の対話から生まれた感動の科学入門』(ブルーバックス)をオンライン向けに再編集したものです。

次に、ガリレオの衛星に関する理論のまちがいについて話をしよう。それは、君が自分で見つけることだってできるまちがいなのだが、それを最初にすべてひとりで発見したのは、16~17世紀のフランスの科学者、マラン・メルセンヌ(1588~1648)だった。

ガリレオによると、重力加速度はすべての物体に対して地球上でも地球をとり囲む空間中でもどこでも同じであるという。さて、ガリレオは地球がまるで月に似ているのを観察した。それなら月の上や月をとり囲む空間中の重力加速度もまた、あらゆるところで同じでなければならないはずだ。

地球から月へと打ち上げられた石を想像してみよう、とメルセンヌは言った。かれはとても想像力に富んでいたのだ。地球の近くでは、その石はある特定の加速度で地球に戻ってくるだろう。しかし、もしその石が地球の圏内から抜け出して、月に近づいたら、それはすぐに月の重力によって、地球上の加速度とは別の何らかの加速度で月に引き寄せられるだろう。

メルセンヌは次のような問いをたてた。地球と月の境界線はどこなのだろうか? 石がある地点までは一方向に引き寄せられ、そして突然、もう一方の方向に引き寄せられるなどということはありうるのだろうか? そのようなことはありえない、とメルセンヌは主張した。

ありうることは、石の地球に対する重力は、その石が地球から離れれば離れるほど小さくなり、重力が地球にも月にも向かわなくなるような、ある特定の地点に達するまで、小さくなることだ。その地点から先は、重力は月に向かって増えつづけ、その結果、地球から月に至る重力変化の状況は、連続的で、なめらかなものになるのだ、と。