軽い羽根と重い石が同時に着地した、だと…? ありえない実験結果から生まれた「壮大なアイデア」

AI要約

古代ギリシャの原子論から、コペルニクスの地動説、ガリレオの望遠鏡、ニュートン力学、ファラデーの力線、アインシュタインの相対性理論まで、科学の歴史を通じて大発見がどのようにして生まれたかについて解説。

ガリレオは、自然の家族という理論を提唱し、アリストテレスの重いものが軽いものより速く落ちる説を否定。空気抵抗を取り除けば、すべての物体は同じ速度で落下することを実験で示し、重力の法則を確立。

ガリレオの実験により、物体は落下するにつれて速度を増すが、すべての物体に対して同じ加速度がかかることが明らかになり、羽根や紙が軽いから遅く落ちるという誤解を指摘。

軽い羽根と重い石が同時に着地した、だと…? ありえない実験結果から生まれた「壮大なアイデア」

古代ギリシャの原子論から、コペルニクスの地動説、ガリレオの望遠鏡、ニュートン力学、ファラデーの力線、アインシュタインの相対性理論まで、この世界のしくみを解き明かす大発見はどのように生まれてきたのか?

親子の対話形式でわかりやすく科学の歴史を描き出した新刊『父が子に語る科学の話』から、偉大な科学者たちの驚くべき発見物語の一端をご紹介しよう。

*本記事は、ヨセフ・アガシ著/立花希一訳『父が子に語る科学の話 親子の対話から生まれた感動の科学入門』(ブルーバックス)をオンライン向けに再編集したものです。

ガリレオとコペルニクスは、世界を小さいものと大きいものに分けた。小さいものは、できることならいっしょにまとまりたい。大きいものは完全な円で運動する。そこで、ガリレオによると、人工衛星にどうしても必要なことは、どんな物質であれそれが円運動するのを地球が許すまで十分に地球から遠ざけることである。どんな物質であれ、それが地球のそばに留まっているかぎり、地球の一部であり、地球に再結合しようとする。

ガリレオの理論は、自然の家という理論ではなく、「自然の家族」とでもいうような理論だ。家族全体はいっしょになって円運動することができるが、家族のすべてのメンバーはどこにいても家族のもとに帰ろうとする。

アリストテレスは、重いものが軽いものより速く落ちると主張していたが、ガリレオは、アリストテレスがまちがっていたことを証明した。

羽根は岩と同じ速度では落ちない。どうしてふわふわと落ちるのだろう? 羽根には重さがないからか、それとも、何かが羽根を浮かび上がらせるからか? どうしたら、重たいものをゆっくりと落とすことができるだろう?

パラシュートをつけるのもひとつの案だ。羽根は一種のパラシュートだね。羽根をまるめて小さなボールにしたら、それはより速く落ちるだろう。あるいは、羽根を真空の管に入れたら、速く落ちるはずではないだろうか。

これはロバート・ボイル(1627~1691)が1660年に試みた実験だ。ボイルは羽根と大理石を管に入れて、真空ポンプを使って、管から空気を抜き、そして管を逆さまにした。羽根と大理石はほとんど同時に落下した。完全にいっしょというわけではなかったけれども。ボイルは完全な真空をつくることができなかったからだ。

この実験はガリレオが正しかったことを示した。空気抵抗がなければ、すべての物体は同じ速度で落下するのだ。物体は落下するにつれて、その速度はしだいに増すが、すべての物体が同じように速くなる。言いかえれば、加速度は、すべての物体に対して同じである。これがガリレオの「重力の法則」だ。

重力の法則は、いまでは、たくさんの人が知っている。でも、いまの人たちでさえ、少し混乱している。たとえば、多くの人々は、いまでも、羽根や紙は軽いからゆっくりと落ちるのだとまちがって考えている。

さあ、1枚の紙をボールのように丸めることでも簡単な実験ができるよ。容易にわかることだが、紙は、丸めたときにはそんなにゆっくりと落ちるわけではない。丸めた紙は丸めない紙にくらべて重くなったわけではないことに君も賛成するだろう? だが、人々はこのことを忘れてしまいがちなのだ。

ガリレオはみんなが知っている実験をおこなったが、明晰な思考の助けを借りて、たいていの人が考えていたものとまったく正反対の結果を得た。ガリレオは、棒や石と羽根や紙は、空気の影響をとり除けば、すべて同じ速度で落ちるのだと結論づけると、今度は、物体が落ちるにつれて速度を増す理由を見つけようとした。