透析治療が長くなると寝たきり・フレイルになる頻度高く…九州医療科学大准教授「健康寿命延ばしたい」

AI要約

透析治療の長期化により、身体機能が衰えて寝たきりやフレイルになる頻度が高まることが研究で明らかになった。

研究チームは日本透析医学会のデータを分析し、透析歴が長くなるほど寝たきりやフレイルの頻度が上がることを発見した。

今後の研究では、透析患者の健康寿命を延ばすための医療手法を模索する必要があるとしている。

 九州医療科学大(宮崎県延岡市)の戸井田達典・薬学部准教授(43)らの研究グループが、透析治療の長期化で寝たきりや、筋力などの低下により身体機能が衰えるフレイルになる頻度が高くなることを明らかにした。糖尿病や高血圧などによって慢性腎臓病となり、透析を受けている患者は国内に34万人以上いるとされる。透析専門医として日々、患者と向き合う戸井田准教授に研究内容などを聞いた。(尾谷謙一郎)

 「新潟大の山本卓先生の発案で、2022年冬に日本透析医学会に所属している6人による共同研究がスタートし、私は論文データの解析や執筆を担当した。透析患者の中には寝たきりの方や、筋力が落ちて移動に介助を必要とする方などがいる。身体的な機能を維持しながら健康寿命をどう延ばしていくかは、私自身、常日頃から課題に感じていた」

 「昨年9月に論文が完成し、今月に米国の科学誌『American Journal of Kidney Diseases』に掲載された」

 「日本透析医学会が年1回、全国の透析施設に対して患者調査を行っており、今回は18年のデータを基に、透析歴が長くなると寝たきりやフレイルの頻度がどうなっているのかを研究した。データには年齢や性別、血圧など日常診療でも扱うものや臨床上のデータも入っている。通常、年齢が高くなると寝たきりになる割合は高くなるが、そういう影響とは別に解析した結果、透析歴が長くなるにつれて寝たきりやフレイルの頻度が上がることがわかった」

 「なぜ透析歴が長くなると寝たきりやフレイルになるのかは分かっていない。長い透析期間による身体負担の蓄積があるかもしれない。透析歴が長くなっても寝たきりやフレイルにならないようにするためには、どのような医療を施せば良いのか、さらに研究していく必要がある」

 「高齢化社会が進むなか、単に寿命を延ばすだけでは課題の解決にはならない。透析を続けていても歩けたり、動けたりしながら寿命をまっとうするのが理想と考えている」

 「いわゆる健康寿命を延ばしていき、寿命だけが延びて寝たきりになってしまう状況を減らしたい。通常の日常生活を送ることができる期間をどれだけ延ばしていくかは重要な問題だと思う」

 戸井田達典(といだ・たつのり)=延岡市出身。2005年北里大医学部卒、17年宮崎大大学院修了。22年から九州保健福祉大(現・九州医療科学大)薬学部准教授。妻、長男(15)と3人暮らし。趣味は読書、ゴルフ。