福祉送迎車、市民の足に 来春、新交通インフラ導入 黒部モデルを全国発信 市社福協

AI要約

市内の福祉施設車約210台は維持費が年間約2億円かかるが、低稼働率に着目して有効活用を図る取り組みが始まった。

福祉施設の車両やスクールバスを利用し、地域の交通インフラとして活用するためのプロジェクトが進行中で、地域共創に向けて様々な団体が参画している。

住民参加型の取り組みを通じて、地域の交通手段に関する課題や将来の交通の在り方について議論が行われ、新たな交通網の構築に向けた準備が進められている。

福祉送迎車、市民の足に 来春、新交通インフラ導入 黒部モデルを全国発信 市社福協

  ●市内に210台、低稼働率に着目

 黒部市社会福祉協議会は、福祉施設の送迎車などを免許返納後の高齢者や子どもの送り迎えなどに活用する事業に乗り出した。市内の福祉施設車約210台は維持費が年間約2億円掛かる一方、利用者の送迎のみに使われているため、市民の移動手段に利用を拡大し、地域の交通インフラとして役立てる。来春の都内での成果発表後に本格導入し、黒部モデルとして全国に普及させる方針だ。

 市社会福祉協議会が調査研究機関として設立した「SMARTふくしラボ」が事業に当たる。ラボの調査では、市内の福祉・介護事業所が保有する車両は維持費が全体で約2億円に上り、福祉・介護専門職が運転するケースが多い。稼働率の低さに着目し、有効活用することにした。

 福祉施設の車両に加え、スクールバスの利用も想定し、国土交通省モデル事業の採択を受けて準備を進めている。7月下旬のワークショップで、高校生から子育て、シニア世代まで幅広い年代の住民40人程度が一日の移動経路と出発・到着時間、手段などをシートに記した。今後、この経路を地図上で「見える化」して分析した上でデータを共有し、新たな交通網の仕組みをつくる。

 事業には災害時の避難時間を地図上に可視化する「逃げ地図」を開発した日建設計(東京)、さまざまな課題の構造化・図解化で実績のある図解総研(同)が参画する。事業は地域共創「コミュニティ・ドライブ・プロジェクト」と銘打った。

 ワークショップでは、地域の交通手段に関する困りごと、10年後の交通のあり方について住民が意見交換し、子育て世代からは「子どもの習い事の送り迎えが大変」との声が上がった。これに対し、シニア世代から地域交流を兼ねて習い事送迎への協力を申し出るなどマッチングの可能性を探った。

 次回ワークショップで移動情報を見える化したデータを共有し、行政、企業・民間団体も加わり新たな仕組みづくりを検討する。来年2月の成果報告会後、市内での実践や全国各地での応用展開につなげる。