ホタルが水利きした日本酒って!? 森林保全への貢献も

AI要約

元坂酒造が「失われつつある日本の原風景を伝え残すこと」をテーマに、ホタルが訪れた年にだけ製造する日本酒〈語蛍〉を発表。

宮川の清流から生まれるこの日本酒は、甘みをテーマにした軽やかな味わいで、環境にも配慮した製造がされている。

製造される瓶もリターナブル瓶を使用し、売り上げの一部は水質保全に寄付される取り組みも行われている。

ホタルが水利きした日本酒って!? 森林保全への貢献も

■酒造のテーマは「失われつつある日本の原風景を伝え残すこと」

メガソーラーの設置、過度な森林伐採など。近年、古来から続く森林環境へ人の手が加わり、水質悪化や生態系への影響が危惧されています。

里山の夏の風物詩であるホタルにも、その影響は顕著。清流を好むホタル生息域は、この50年で10分の1になったそうです。

同じく「水」が製造の要である日本酒ですが、後継者不足や経営破綻などによる廃業などから1999~2019年の20年間で、全国の酒蔵の数は2007社から1235社に激減しています(※)。

※:国税庁「清酒製造業の概況 令和2年調査分」より。

三重県で1805年創業の老舗・元坂酒造は、森林環境の保全への願いと、そのようなホタルと日本酒には上質な水が欠かすことができないという共通点から、「失われつつある日本の原風景を伝え残すこと」をテーマに、ホタルが訪れた年にだけ製造する日本酒〈語蛍(かたる ほたる)〉を発表。2024年6月21日に2500本もの語蛍が発売されました。

元坂酒造の重要な原料である水は、国交相の一級河川水質調査で過去何度も日本一と評価され、「清流日本一」として名高い日本屈指の清流・宮川です。

自らの学問を「発光生物学」と称し、ホタルや発光キノコなどを研究する大場裕一教授も、宮川のことをこのように話しています。

「過去11回にわたり「水質1位」を獲得している宮川は、極めて水質の高い河川です。ゲンジボタルは河川の水質の問題に加え、光の明るさや河川の護岸がコンクリート舗装されているかなど、様々な要因で出現するか否かが決まると言われていますが、特に水質においては、生活排水や工業廃水などによる汚染が極めて少ないことがホタルの生息に影響する要因のひとつです」

■〈Ăn Cơm〉ソムリエが開発した軽やかな味わい

商品開発は、シュランガイドでもビブグルマンを獲得しているモダンベトナミーズ〈Ăn Cơm〉ソムリエの梅村建之氏が監修。水本来が持つ甘みをテーマに、現代的な味わいで、日本酒を飲み慣れてない方でも飲みやすいそう。

「バラのような甘やかなお花やほのかに香るバナナのニュアンス。味わいは、上品な甘味で構成されており、柔らかくキメの細かいテクスチャーは清流宮川を表現しています。アタックからフィニッシュまで通して、一貫性のある綺麗な透明感と随所に感じられる瑞々しさがあり、お水のようにスルスルと飲み進められるお酒です」と、梅村さん。6~7度に冷やして、薄口の小ぶりなグラスで飲むと、より一層お酒の味わいや風味を感じられるとのことです。

■環境負荷をかけないよう、製造の段階から配慮が

また、お酒を入れる瓶にも環境への配慮が。すべてリターナブル瓶を使用し、製造時のCO2排出量は1本あたり120グラム減少できるそうです。製造時も環境負荷は最小限になるような工夫がなされ、1本あたりの売り上げから150円が三重県大台町に寄付され、宮川の水質保全に係る取り組みへと当てられます。

「私たち元坂酒造の酒造りは、機械設備により醸造環境のコントロールをするような近代の日本酒にみられる工業的酒づくりではありません。宮川とその宮川が侵食した事で形成された土地を生かし、その年の天候や雨量を自然からの授かりものとして受け入れる、極めて自然な酒づくりです。だからこそ、酒造りを生業として続けていくためにも、宮川の水を守りこの里山の風景を守ることが不可欠なのです」

コンセプトから製造、味わい、そのすべてが神秘的で奇跡のような〈語蛍〉。宮川が産んだまぶしい一本をぜひ、この夏の粋として味わってみてください。

information

語蛍(KATARU HOTARU)

Instagram:@kataruhotaru

writer profile

Kanae Yamada

山田佳苗

やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。

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