モトGP撤退のスズキが鈴鹿8耐に参戦する理由 レースで技術鍛えてカーボンニュートラルに挑戦

AI要約

スズキは、環境に配慮した二輪車で「8耐」に参戦し、8位に食い込む結果を出した。世界最高峰「モトGP」からは撤退したが、鈴木俊宏社長は「『レースは実験の場であるべき』という原点回帰をしなければいけない」と語った。

19~21日に鈴鹿サーキットで開かれた「鈴鹿8時間耐久ロードレース」でのスズキの取り組みや苦労、実験的な車両の構成について。

スズキがモトGPからの撤退を経ても、新たな取り組みとして8耐への再参戦を通じて得た成果や今後の展望について。

モトGP撤退のスズキが鈴鹿8耐に参戦する理由 レースで技術鍛えてカーボンニュートラルに挑戦

スズキは、環境に配慮した二輪車で「8耐」に参戦し、8位に食い込む結果を出した。世界最高峰「モトGP」からは撤退したが、鈴木俊宏社長は「『レースは実験の場であるべき』という原点回帰をしなければいけない。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を求められる中で、実験ができるレースの場は非常に意義が大きい」と語った。

19~21日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開かれた「鈴鹿8時間耐久ロードレース」。スズキのワークスチーム「チームスズキCNチャレンジ」は、このレースに「GSX-R1000R ヨシムラSERT EWC CN仕様」を持ち込んだ。トタルエナジーズが手掛ける、農業残さから製造した第二世代のバイオマス(生物由来)原料を使用した40%バイオ由来燃料、ブリヂストンの再生可能資源比率を高めたタイヤ、トラスの天然亜麻繊維を用いた複合材料を使った前後フェンダーのほか、マフラーやオイル、カウル、フロントブレーキ、バッテリーなどに「サステイナブルアイテム」を多数活用した実験的な車両だ。

二輪事業を担当する田中強本部長は「『これくらい走れる』ということは事前にわかっていたが、ここにたどり着くまでに苦労があった」とも振り返る。

一例がフロントブレーキだ。サンスター技研が供給し、ブレーキディスクの製造工程における熱処理を廃止し、製造時の二酸化炭素(CO2)排出量を半減させた一方で「ライダーからは『思ったような減速ができない』と話があった」(田中本部長)という。スズキとサンスター技研で材料や生産プロセスの見直しなどを重ね、競技車両に使える性能にまでこぎ着けた。

スズキは2022年シーズンを最後にモトGPから撤退し、世界耐久選手権(EWC)のワークス参戦も打ち切った。鈴木社長は「(モトGP撤退時に)私が欧州まで飛んでチーム全員に話をした。このようなことは二度と経験したくないと思った」と話す。

今回、8耐への再参戦に向けて、レースに関わるメンバーを集めた。総勢29人のうち、15人を全社から公募したところ、およそ100人の応募があったという。鈴木社長は「さまざまな部署から集まったメンバーでよくここまでやってくれた」と目を細める。今回の参戦で得られたデータや知見は今後、二輪車だけでなく、四輪車や船外機などにも生かす考えだ。

鈴木社長は「レースを復活するにしても腹を据えてやることが必要だ。レース活動の中で技術開発、チャレンジができることがあれば取り組む」と昨年の株主総会で語っていた。この一環が今回の8耐参戦だ。短期開発や臨機応変な対応が求められるレースを通じたスズキの技術革新は今後も続きそうだ。

(藤原 稔里)