若者引きつける「ゼブラ企業」って? 共感呼ぶ「みんなのために」

AI要約

ゼブラ企業とは、社会課題解決と経済成長の両面を追求する企業であり、若者にも魅力的な新たなチャレンジを提供している。

ゼブラフェスでは、急成長するスタートアップ企業や地域社会に貢献する取り組みについて話し合われ、広島からも多くの参加者が集まった。

ゼブラ企業は「長期的にみんなを幸せに」という理念を持ち、インパクト投資の伸びも背景に、社会課題の解決を目指して活動している。

若者引きつける「ゼブラ企業」って? 共感呼ぶ「みんなのために」

 「ゼブラ企業」って聞いたことがありますか。ゼブラ(シマウマ)が群れで行動するように社会での「共存」を大切にし、白黒模様のように「社会課題解決」と「経済成長」の両面を求める企業。未来を良くする実感、そのための新たなチャレンジをする仕事は、今の若い世代にも魅力的に映るようです。広島などの地方でも「ゼブラな仕事」は、出て行こうとする若者たちを振り向かせる選択肢になるかもしれません。

 6月下旬に東京・下北沢であったゼブラフェスは、朝から晩まで熱気であふれた。トークセッションやワークショップに参加したのは、起業家や企業の新規事業担当者、学生、投資家たち約500人。多くが20~40代で、会場の内外で名刺交換し、話し込んでいた。

 登壇者たちは、宮崎でのAIを活用した農業、福島の柿の皮を活用したデリケートゾーンのケア用品の開発、現代的な茶道など、これまでの枠組みを超える試みを報告した。広島から駆け付けた参加者からは「『みんなのために』は若い世代を含め共感を呼ぶ」「社会課題に向き合う企業が広島でも増えたら」との声が上がった。

 さて、あらためて「ゼブラ企業」とは―。評価額1千億円を超える急成長を遂げたスタートアップ企業を指す「ユニコーン」とは異なり、「長期的にみんなを幸せに」を理念とする。一定の時間をかけ、地域コミュニティーなど多様な力を組み合わせて、複雑に絡む社会課題の解決を目指す。

 ゼブラ企業への期待は、社会や環境に変化(インパクト)をもたらす事業への「インパクト投資」の伸びからもうかがえる。国内の2023年度のインパクト投資残高は11兆5千億円で、前年の2倍となった。政府の成長戦略「骨太の方針」に基づき、中小企業庁は今年3月、地域に根ざす「ローカル・ゼブラ企業」の基本指針を示し、モデル事業に乗り出した。

 なぜ、ゼブラ企業への期待が高まっているのか。「社会が大きく変化しているから」と説明するのは、下北沢のフェスを仕掛けたゼブラアンドカンパニー(東京)共同創業者の陶山(すやま)祐司さん(37)。「高度経済成長を終え、人口減少や少子高齢化に直面し、給料も上がらない。みんなに『もう無理』っていう感覚があって。企業に対しても『何とかしてくれ』という要請が膨らみ、社会課題の解決を担うビジネスがこれまで以上に必要とされている」と語る。

 ゼブラフェスに広島の起業家たちと参加した広島県立叡啓(えいけい)大の早田吉伸教授は「行き過ぎた資本主義社会に違和感のある若者たちにとって、ゼブラ企業は共感して働ける場になり得る」とみる。「大企業に入っても安泰と言えず、自分が何者かを問われ続ける時代。持続可能な社会や地域のためになる仕事、共存を大切にするスタイルに価値を感じるのではないでしょうか」