人気のコンサル業界、フェルミ面接「フィットネスクラブの1ヵ月の売上を推定せよ」どう答える? 採用されるために必要な思考のレベル

AI要約

コンサル業界で人気の高いフェルミ推定やケース面接の入社試験について紹介。

フェルミ推定の例題と解答例を通じて問題解決力や地頭力を測る方法を解説。

フィットネスクラブの売上推定の手順や具体的な解答例を紹介しながら、論理的思考力を高めるヒントを提供。

人気のコンサル業界、フェルミ面接「フィットネスクラブの1ヵ月の売上を推定せよ」どう答える? 採用されるために必要な思考のレベル

 今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「フェルミ推定」や「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した1冊だ。本稿では「フェルミ推定の例題と解答例」について、本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

● フェルミ推定で論理的思考力と説明力が試される

 フェルミ推定とは、「一見予想もできず捉えどころのない未知の値を、いくつかの手掛かりを使って論理的に推論し、短時間で概算すること」です。

 解答するためには論理的思考力や説明能力などの総合的な「地頭力」が求められるため、コンサルティングファームの採用選考において最頻出問題となっています。

 初めて取り組む人には難しく見えるかもしれませんが、回答の手順を頭に入れ、有名コンサルティングファームの問題に挑戦することで、論理的思考力や説明能力が自然と身につき、無理なく解けるようになります。

 では、さっそく次のフェルミ推定問題に挑戦してみましょう。

● コンサルの入社試験に挑戦

 面接官:

ある会員制フィットネスクラブの1ヵ月間の売上を推定してください。

 【回答のヒント】

 ・ 「会員制」なので、1ヵ月間の売上は大まかに「会員数×月会費」に分解できます。月会費以外の売上がないかも検討しましょう。

 ・ フィットネスクラブは同時に何人でも利用できるわけではないため、施設のキャパシティ(利用可能人数)を想定しましょう。

 ・ 1ヵ月間の利用者総数=会員数ではない点に注意しましょう。

 ※フェルミ推定問題では、最終的な数字の正確性よりも「どう考えるか?」が問われています。

 回答のポイント:会員制フィットネスクラブの売上構造を押さえる

ある会員制フィットネスクラブのビジネスモデルを想像したうえで、売上の構成を明確にし、抜け漏れなく推定しましょう。

 以下が解答例です。

● 「ある会員制フィットネスクラブの月間売上」の推定範囲を明確にする

 私はゴールドジムのような会員制フィットネスクラブを念頭に、全店舗合計の月間売上ではなく、「ある会員制フィットネスクラブ1店舗における月間売上」を推定したいと思います。

 また、この「ある会員制フィットネスクラブ」は24時間営業で、主要駅前の好立地に位置し、一定の会員を獲得できている店舗であると仮定します。

● ビジネスモデルを想像し、売上を分解する

 会員制フィットネスクラブの売上を、会員から毎月徴収する「会費売上」や、プロテインやトレーニング用品などの「物販売上」、有料プログラムの提供などの「サービス売上」の3つに分解することで、以下のように推定式を立式できます。

 1ヵ月間の売上

=会費売上+物販売上+サービス売上

=(会員人数×月会費)+(1ヵ月間の物販利用人数×平均客単価)+(1ヵ月間のサービス利用人数×平均サービス料金)

● 個々の売上ごとに金額を推定する

 3つの売上を推定するために、まず、会員人数について考えます。先ほどの推定式を次のように変形します。

 1ヵ月間の会費売上

=会員人数×月会費

=(1ヵ月間の延べ利用者数÷1人あたりの月間平均利用回数)×月会費

=(ある1日の利用者数×30日÷1人あたりの月間平均利用回数)×月会費

=(キャパシティ×稼働率×営業時間÷平均利用時間×30日÷1人あたりの月間平均利用回数)×月会費

 ここで、フィットネスクラブのキャパシティ(利用可能人数)は少し多めの50名としました。

 これは私が通っている駅に近いフィットネスクラブのロッカーの数が50個ほどであったことから、ロッカーの数がキャパシティに相当すると仮定して設定しました。

 また、平均利用時間については、2時間と想定しました。

 稼働率は時間帯で異なると考え、次のように場合分けをして、ある1日の利用者数を210名と推定しました。

 これに30日間を乗じると、1ヵ月間の総利用回数は6300回となります。

 次に、1人あたりの月間平均利用回数を考えます。

 利用者全体の50%が週1回、30%が週2回、20%が週3回でフィットネスクラブに通うものと仮定して加重平均をとると

 週1回×50%+週2回×30%+週3回×20%

=0.5+0.6+0.6

=週1.7回

 となり、およそ週に2回はフィットネスクラブに行くとして、1ヵ月間では2回×4週間で8回としました。

 以上より、会員人数は次のように推定できます。

 会員人数

=1ヵ月間の総利用回数÷1ヵ月あたりの月間平均利用回数

=6,300÷8

=787.5

≒800(名)

 私の経験から月会費は毎月8000円として、会費売上を推定すると、

 1ヵ月間の会費売上

=会員人数×月会費

=800×8,000

=6,400,000

=640万(円)

 と推定できました。

 会員人数が明らかとなったので、次に物販売上とサービス売上について検討したいと思います。

 先ほどの会員人数800名のうち、2割の会員がプロテインなどを月3000円程度で購入し、4割の会員が月2000円程度の有料プログラムを利用しているとして、次のように推定しました。

 物販売上

=800×0.2×3,000

=480,000

≒50万(円)

 サービス売上

=800×0.4×2,000

=640,000

≒60万(円)

 以上より、ある会員制フィットネスクラブの1ヵ月間の売上は、

 1ヵ月間の売上

=会費売上+物販売上+サービス売上

=640万円+50万円+60万円

=750万円

 と推定できました。

 以上となります。ありがとうございました。

● 面接官からの質問

 ――推定した売上の金額規模に違和感はありますか?

 フィットネスクラブにおける毎月の主な費用として、人件費が月150万円(月30万円×従業員5名)、物件賃貸料が月100万円、機材費が月100万円と仮定すると利益率は50%程度となります。

 利益率が高い印象もありますが、その他にも物販の調達費用や水道光熱費などを考慮すれば大きくは外れていないように思います。

 ――今回の推定方法について改善余地がありますか?

 売上の大きな割合を占める会費売上の推定方法をより丁寧にできると考えます。

 例えば、平日と休日では稼働率が異なるため、各々で場合分けします。

 また、会費についても私の経験から8000円と置きましたが、24時間いつでも利用できる代わりに会費が高く設定されていたり、逆に特定の時間帯のみ利用できるという制限付きで安価な会費プランを提供していたりするフィットネスクラブもあるので、こうしたタイプ別の考慮もできると精度が向上すると感じています。

 ――この会員制フィットネスクラブの売上向上策として、どのようなものが考えられるでしょうか?

 今回の推定では、特に深夜から早朝、日中における時間帯でキャパシティを持て余しているため、この時間帯のみ利用できる安価な会費プランを導入して新規会員を開拓します。

 立地は申し分ないので、「価格の高さ」が入会のボトルネックとなっていそうな学生に訴求できるのではないでしょうか。

 その他、プロテインやサプリメントの充実化や有料プログラムの新規開発といった物販売上やサービス売上の拡大にも取り組むことで、客単価を高められると考えます。

 (本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)