ただの思い付きじゃなかった? 小泉進次郎氏が「解雇規制の緩和」をぶち上げたワケ

AI要約

自民党総裁選を巡り、小泉進次郎元環境相の解雇規制緩和発言に冷ややかな見方が広がる。

小泉氏は過去にも解雇に関する発言を行い、労働法制や解雇規制に対する認識の低さが問題視されている。

総裁選で有力視される小泉氏の立ち位置や過去の発言が注目を集めている。

ただの思い付きじゃなかった? 小泉進次郎氏が「解雇規制の緩和」をぶち上げたワケ

「神輿は軽い方が扱いやすい。そう思って担いだら軽過ぎて吹っ飛びかけている」

 27日投開票の自民党総裁選を巡り、一部党内からこんな冷ややかな見方が出ているのが、党員・党友投票で上位に食い込むと見られている小泉進次郎元環境相(43)だ。

 その小泉氏がぶち上げ、早々にトーンダウンせざるを得なくなったのが「解雇規制の緩和」だった。

「解雇の自由化を言っている人は、私も含めて誰もいないと思う。私が申し上げていることは、新卒で就職したら終身雇用。この柔軟性のない労働市場が令和の時代も続くと正規・非正規の格差是正につながらないという問題意識だ」

「正規で雇いやすい環境をつくる。大企業で眠っている人材が、成長分野に前向きに移動できる環境をつくる。そのために大企業に対し、リスキリング、ジョブカウンセリング、再就職支援をしっかりと義務づけ、新しい前向きな労働市場の形をつくっていかなければならない」

 13日に行われた総裁選の共同記者会見でこう述べ、SNSなどでみられた《首切り自由化反対》《雇用破壊》との世論批判を打ち消していたが、なぜ、小泉氏は解雇の規制緩和を口にしたのだろうか。

 TVメディアでは“突貫工事”で叩き上げた政策だから、のような見方もあるようだが、小泉氏の過去の国会答弁を振り返ると、「解雇」に対する思い入れは以前から一家言あったようだ。

■国会議員は「労働基準法なんて関係なくいつも働いている立場」

 2013年秋。当時の安倍政権は「国家戦略特区」で労働法制の議論を初めていて、この時、労働法の識者やユニオンなどから問題視する声が出ていたのが、解雇ルールを柔軟に設定できる「解雇特区」の活用だった。

 野党や世論の批判もあり、結局「解雇特区」は事実上見送りとなるのだが、この規制緩和を巡り、内閣府の大臣政務官として答弁に立った小泉氏はこう言っていた。

「まず前提として、解雇特区という特区はありませんし、これからも解雇特区という特区ができるとは思っておりません。そういった特区をつくるのではなくて、まさに国家戦略特区ですから、国家戦略に基づいた特区をつくると。多様な働き方が実現することは利益になるように、どういった特区になるか(略)基本的人権が侵されるような、そういったことはないと思いますし、私たち国会議員も労働基準法なんて関係なくいつも働いている立場ですし、ワーク・ライフ・バランスもない立場ですから」(13年11月5日の参院厚生労働委員会)

「国家戦略特区ですから、国家戦略に基づいた特区をつくる」。この頃から、すでにみられた“小泉構文”はともかく、国会議員は「労働基準法なんて関係なくいつも働いている立場」「ワーク・ライフ・バランスもない立場」という発言は気になるところだろう。労働法制や解雇規制に対する認識の低さに加え、恨み節とさえ受け取られかねない内容だったからだ。

 さらに同月20日の衆院厚生労働委員会ではこうも言っていた。

「今回の雇用制度改革の議論で、一方では解雇特区だと批判をされ、一方では不十分だと言われ、どっちをやっても批判はあるんですね。そういった中で、今回、国家戦略特区法案の中で、雇用のあり方の明確化をしようと。(略)着実に前に進めていこう、そういった思いでこの法案を出させていただいておりました」

「雇用のあり方を明確化しよう。着実に進めていこう」。この思いがいまだに続いているようだが、2013年当時になぜ「国家戦略特区」のメニューに「解雇規制の緩和」含まれなかったのか。その理由も思い出してほしい。

  ◇  ◇  ◇

 総裁選で有力視される小泉氏。●関連記事【もっと読む】では『小泉進次郎氏のトンチンカンが止まらない!「大学に行くのがすべてではない」「改憲はファストパス」まで飛び出す始末』【さらに読む】では『島根・丸山知事が小泉進次郎氏の「解雇規制緩和」に異論、“親子2代で雇用を非正規化”のド正論を裏付ける数字』を取り上げている。