会社からいくらもらえたら安心して辞められる?…金銭解決も含めた「解雇規制の見直し」、2社からクビ宣告された男が指摘する「これだけの問題点」

AI要約

正社員の解雇が簡単であり、労働基準監督署は助けられないことが問題である。裁判で和解金を獲得した男性の経験から、解雇規制の見直し問題が指摘されている。

解雇裁判中の周囲からの評価が苦痛であり、正社員の解雇は簡単だが裁判所は解雇を認めない傾向がある。しかし、裁判期間が長期化し精神的・経済的負担が大きい。

労働関係訴訟の平均審理期間が長いため、不当解雇が当然に処理されると認識されている。裁判所の役割が大きいが、その過程には多くの困難が伴う。

会社からいくらもらえたら安心して辞められる?…金銭解決も含めた「解雇規制の見直し」、2社からクビ宣告された男が指摘する「これだけの問題点」

「正社員は簡単に解雇することができる」と聞くと驚く人もいるだろうが、少なくとも頼みの綱である労働基準監督署は助けてくれない……。そんな、「解雇規制の見直し問題」の根っこにある問題点を前編記事〈小泉進次郎「 解雇規制の見直し」論が見落としている「意外な問題点」…2社からクビ宣告後、裁判で計4700万円を勝ち取った男が指摘〉で指摘してくれたのは、2社からクビを宣告されたあと、裁判で和解金4700万円を獲得した経験がある佐藤大輝氏(33歳)。

本稿では引き続き、自民党総裁選に伴いホットな話題となっている「解雇規制の見直し問題」について佐藤氏が解説する。

解雇無効を求める裁判期間中、私が最も苦しかったのは「周りからの評価」だった。家族や友人からは「裁判なんて馬鹿なことはやめとけ」「会社相手に勝てるわけない」と言われ続けた。

彼ら彼女らの考え方の根底には、正社員の解雇は簡単にできない。解雇されたということは、労働者側にもかなり落ち度があったのではないか……この考え方が大きく影響しているように感じた。

前編記事で詳しく述べたが、どんなに理不尽な解雇理由だろうと、正社員の解雇は簡単に実行できる。労働基準監督署(労働局を含む)は、困った労働者を助けたくても助けることができない。なぜなら不当解雇の問題は、労働基準法ではなく労働契約法に関わる問題だから。解雇問題のセーフティーネットは、労基署ではなく裁判所がその役を担っている。

労働者にとっての唯一の救いは、裁判所はそう簡単に解雇有効とは認めないこと。これが日本社会で「正社員の解雇は難しい」と言われる理由だが、判決が出るまでには膨大な時間、お金、労力が必要になる。また判決が出るまでの期間、不当解雇は不当解雇として扱われない。取り急ぎ、有効な解雇として処理される。

最高裁判所が公表している『裁判の迅速化に係る検証に関する報告書』によると、令和4年の労働関係訴訟の平均審理期間(和解や訴訟取り下げを含め、裁判所が事件を受理した日から終局日までの期間)は17.2ヶ月だった。これだけの長い期間を戦うとなると、当たり前だが、精神的にも経済的にも削られてしまう。