岐路に立つニッポンの主食…コメ価格が高騰でも廃業農家急増のナゼ

AI要約

コメ価格の高騰とコメ農家の経営危機についての意見の相違が明らかになっている。

コメの価格上昇が適正かどうか、生産者と流通関係者で温度差があり、コメ農家の倒産・廃業が急増中である。

生産コストの上昇や後継者不足など、さまざまな要因がコメ農家の経営を圧迫しており、消費者も価格変動を受け入れる必要がある。

岐路に立つニッポンの主食…コメ価格が高騰でも廃業農家急増のナゼ

「日本の主食」を巡り、意見は真っ二つだ。農水省が4日、コメの生産者や流通業界関係者などを集め、意見交換会を開いた。コメが不足し高騰している事態を受け、米価に議論が集中した。

 流通関係者は「昨年は5キロあたり1500~2000円だった新米の店頭価格が、3000円を超えている」と現状を報告。卸売関係者も、高騰が続けば麺類やパンに需要がシフトしかねないと危機感をあらわにした。

 一方、生産者側は「今の価格が適正に近いのではないか」とし、これまでの米価が安すぎたとの見解を示した。消費者物価指数によると、今年1~6月の米類価格の上げ幅は、2020年比3.9%。食料全体の16.1%を大幅に下回った。円安・物価高にもかかわらず、国内消費量の減少などにより、値上げは限定的になっている。

 コメの適正価格を巡る「買い手」と「売り手」の温度差はクッキリだが、安く買い叩かれている感は否めない。帝国データバンク(TDB)は5日、「コメ農家の倒産・廃業が急増中」との調査結果を発表。今年1~8月の間に計34件の倒産・廃業が発生し、すでに昨年1年間の35件に迫り、年間最多となるのは確実だという。

 背景には、やはり円安・物価高で肥料や農業薬剤、ガソリン・軽油が高騰したことがある。加えて、担い手の高齢化や後継者不足が追い打ちをかけた。

■もう安くは食べられない

「生産コストの上昇に、価格転嫁が追い付いていません。『コメは安いもの』という消費者の強い考えが、価格への反映を妨げています。今の米価は高いどころか、生産者にとってギリギリのラインだと思います。さらに今後の安定供給を目指すには、新規就農者の呼び込みや設備投資、農地拡大のための資金を確保する必要がある。もっと高値が適正とさえ言えるでしょう」(TDB情報統括部・飯島大介氏)

 もはや、これまでと同じ価格では、コメ農家の経営が成り立たなくなっているのだ。

「消費者も今回の騒動をきっかけに、コメ農家が置かれた現状を知ってほしい」(飯島大介氏)

 値上げを受け入れなければコメを食べ続けることはできない。消費者も岐路に立たされている。