猛暑では「口の中」の健康も危ない…飛び込みで来院する患者が急増

AI要約

猛暑の時季になると、口腔内の環境が悪化しやすくなり、虫歯や歯周病が急激に進行する。免疫力の低下や糖分過剰がその要因となっている。

唾液の量が減少する夏は口腔内細菌のバランスが崩れやすく、虫歯菌や歯周病菌が増殖。糖分を含む飲み物をちびちびと飲むことも悪化を招く。

糖分は虫歯菌のエサになり、歯の表面を溶かして虫歯を引き起こす。また、歯周病の原因ともなるので注意が必要。

猛暑では「口の中」の健康も危ない…飛び込みで来院する患者が急増

 相変わらず連日の猛暑が続いている。熱中症や夏バテなどを回避するため、暑い夏は体調に気を付けている人も多いだろうが、“口の中”も注意が必要だという。斉藤歯科医院の根岸亮三氏に詳しく聞いた。

「猛暑の時季になると、定期的に通院されている患者さんではなく、飛び込みで来院される患者さんが目に見えて増えます。今年も、普段は1日3~4人前後の飛び込みの患者さんが、1日5~6人と1.5倍くらい増えています。それらの患者さんは、夏になって虫歯や歯周病が急激に進行して症状が現れたというケースがほとんどです。暑い夏は、口腔内の環境が悪化しやすい季節なのです」

 われわれの口腔内にはおよそ700種類、全体で1000億個以上の細菌が生息しているといわれる。

 ほとんどが病原性のない細菌だが、中にはミュータンス菌やP・g菌のように、虫歯や歯周病の原因になる細菌も存在する。

 これらの口腔内細菌は、口の中の環境や免疫力によって普段はバランスが保たれている。しかし、猛暑ではそのバランスが崩れやすくなり、虫歯や歯周病が急激に悪化するという。

■免疫力低下と糖分過剰が要因

「暑さに対応するために自律神経がフル回転を強いられて疲弊すると、免疫力が低下します。また、暑さによる睡眠不足も免疫力の低下を助長します。さらに、夏は汗をかく機会が増えて体内の水分量が減ったり、暑さによる疲労やストレスによって唾液量が少なくなってしまいます。唾液には、口腔内の細菌やウイルス、食べ物のカスなどを洗い流す作用があります。ですから、唾液量が少なくなると、口腔内細菌のバランスが崩れて虫歯菌や歯周病菌が優勢になり、症状が一気に進行してしまうのです」

 また、体内の水分が減って喉が渇く夏は、こまめに水分補給するために、炭酸飲料やスポーツドリンクなど糖分を含む飲み物を時間をかけて少しずつちびちびと飲む人も多い。この行為も虫歯や歯周病の悪化を招くという。

「糖分は虫歯菌がもっとも好むエサになります。虫歯菌は口腔内の糖分を分解するときに酸を産生します。その酸が歯の表面のエナメル質を溶かして虫歯になるのです。通常であれば、虫歯菌が産生した酸は唾液によって中和され、溶けた歯の表面は修復されるのですが、長時間にわたって糖分が摂取され続けると、唾液による修復が間に合わなくなるのです。また、糖分だけでなく、酸性度が高い飲み物でも、歯の表面は溶けてしまうので、糖質オフの炭酸飲料も要注意です」

 さらに、糖分は歯周病も進行させる。虫歯の原因になるミュータンス菌は、糖分をエサにして粘着性の高いグルカンという物質を産生し、歯の表面に付着する。このグルカンに口腔内の細菌がくっついて、大きな塊=プラークに成長する。

「プラーク内には歯周病菌も存在していて、毒素を出して歯茎にダメージを与えます。すると、歯茎に炎症が起こり、歯周病を進行させるのです。ほかにも、糖分はタンパク質と結合して歯周組織を糖化させます。糖化によって歯周組織が劣化すると、歯周病が進行しやすくなります」

 バランスの取れた食事や十分な睡眠を取るようにして免疫力の低下を防ぎつつ、糖分の多い飲食物や炭酸飲料をダラダラ取り続けることは避ける。食べたり飲んだりした後はうがいを徹底する。猛暑では口の中の健康も意識して対策したい。