「誰にも奪えない」「自分にしか書けない」自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し

AI要約

ふたりの新人作家が読者に共感や癒しを提供する作品について、それぞれのエッセイや小説の要約が述べられている。

潮井さんは初めてのエッセイで高校生活の笑いあり、泣きありのエピソードを通じて自らの書くことへの苦手意識を克服し、せやまさんはデビュー小説で家事というテーマから広がる登場人物たちの抱える問題を描いている。

ふたりが書くことに込めた思いや創作活動のきっかけなどについて語られている。

「誰にも奪えない」「自分にしか書けない」自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し

>>対談前編「『自分を癒やす』『人生のちょっとしたおもしろさを楽しむ』ふたりの新人作家が読者に届けるエール」よりつづく

「心がふっと軽くなった」「共感しかない」「清々しい気持ちになった」といった感想がSNSやネット上のメディアプラットフォーム「note」に寄せられたふたつの作品。

 1月に初のエッセイ集『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した潮井さんは、書くことが苦手だったという。

 初めて書いたエッセイは、高校の家庭科の授業のこと。クラスメイトと“結婚”して、子どもに見立てた卵の面倒を見る。女子高生のドタバタした日常描写に笑っていると、いつのまにかほろりとさせられる。

 4月にデビュー小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(以下、『クリキャベ』)を刊行したせやま南天さんが、初めて書く中編小説のテーマに選んだのは、家事だった。

 仕事で挫折を味わい、家事代行で働き始めた主人公・永井津麦と、津麦の勤務先の、5人の子どもを育てるシングルファーザー・織野朔也一家。津麦と朔也、そしてその家族、それぞれが抱える問題が浮き彫りになり、丁寧に解きほぐされていく物語だ。

 そんなふたりが、書くことに込めた思いや、創作をはじめたきっかけについて語り合った。

*  *  *

■異なる世代がお互いに思いやって、歩み寄るためのきっかけになれたら

潮井エムコ(以下、潮井):私は昔から、物語を書かれる方の思考に興味を持っていました。私は私でしかないから、私じゃない人を創造してなんて書けないと思ってしまうんです。

 でも小説や漫画は、たくさんの違うタイプの人物が登場して、それぞれに一個の人格を持たせて、その人たちが絡み合うことで物語を展開させていくじゃないですか。作者の頭の中はどうなっているんだろうという疑問がずっとあったので、以前漫画家さんとお話しする機会があった時に尋ねてみたんです。そうしたら、「全部自分です」とおっしゃっていて。

せやま南天(以下、せやま):うんうん、そんな感じです。自分の一面を切り分けたり、安富さんみたいに自分がいてほしかった人物を登場させたりしています。