「自分を癒やす」「人生のちょっとしたおもしろさを楽しむ」ふたりの新人作家が読者に届けるエール

AI要約

新人作家ふたり、潮井エムコさんとせやま南天さんのデビュー作について紹介。

潮井エムコさんのエッセイ集『置かれた場所であばれたい』は共感を呼び、幅広い読者から支持を受けている。

せやま南天さんの小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』は創作大賞を受賞し、家族と仕事の関係を描いた作品。

「自分を癒やす」「人生のちょっとしたおもしろさを楽しむ」ふたりの新人作家が読者に届けるエール

「読者の圧倒的支持を得る」。どこかで耳にしたことがある言葉だと思う方も多いだろう。しかし、実際にはそんなに当たり前のことでも、簡単なことでもない。

 今年相次いでデビュー作を上梓したふたりの新人作家、潮井エムコさんとせやま南天さん。

 潮井さんはエッセイストとして、せやまさんは小説家としてデビューした。ふたりの作品は多くの読者に支持され、ネット上には共感の声や応援する声が届けられている。

 まずはふたりのデビュー作について紹介したい。

 潮井エムコさん。初めて執筆したエッセイ数作をnoteにアップしたところSNSで拡散され、累計30万を超える「いいね」を獲得。今年1月にそれらも収録した初のエッセイ集、『置かれた場所であばれたい』(以下、『置かあば』)を刊行した。

 同級生と“結婚”をして生卵を育てさせられた家庭科の授業の話から、折り合いの悪い母との攻防戦を繰り広げた幼少期の思い出まで26編のエピソードを瑞々しく描く。軽妙な語り口ながらも、不意に訪れるほろりとする展開で読者の心をつかんでいる。

 せやま南天さん。仕事と育児を経験し、「家事」と向き合うなかで着想を得て、小説『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(以下、『クリキャベ』)を執筆。noteが主催する創作大賞2023で朝日新聞出版賞を受賞し、今年4月に単行本として刊行された。

 仕事で挫折を味わい、家事代行で働き始めた主人公・永井津麦と、津麦の勤務先の、5人の子どもを育てるシングルファーザー・織野朔也一家。津麦と朔也、そしてその家族、それぞれが抱える問題が浮き彫りになる。不器用ながらも前に進む彼らの姿は、読む人の心をあたためる。

 新人作家ふたりが、お互いや読者からの感想を通して、作品について話し合った。

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■「自由奔放でかつ繊細」という不思議な印象の作品

――おふたりはSNSではやり取りがあったようですが、お顔を見てお話しするのは今日が初めてなんですよね。お互いどんな印象を持っていましたか?

潮井エムコ(以下、潮井):せやまさんのことはネット記事の著者プロフィールでお写真を拝見していまして。その時から、作品とご本人の雰囲気がぴったりだという印象を持っていました。だからか、お会いしたことはないのに、勝手に以前から知り合いだったような気持ちになっていましたね。