「上り坂だけの人生なんてない」...下り坂を見据えたトップ棋士とトップ科学者が語り合う「老いの哲学」

AI要約

現代の日本では平均寿命が上がり、100歳まで生きることが当たり前になっている。老後の過ごし方や医療の発展について考える時代である。

研究者でなければ、人生100年時代にどんなセカンドライフを過ごすかについて議論が交わされる。手に職をつける重要性や生涯現役を目指す家内の姿に触れる。

医師や棋士として生涯現役を続けることの可能性や、引退後も社会とつながりを持つ方法が示唆される。

「上り坂だけの人生なんてない」...下り坂を見据えたトップ棋士とトップ科学者が語り合う「老いの哲学」

人生100年時代。平均寿命が上がり続けている現代の日本では、そう遠くない未来に100歳まで生きることも当たり前になっているだろう。そんな時代にいつまで現役を続けられるのか?どんな老後の過ごし方が幸せなのか?医療はどこまで発展しているのか?

ノーベル賞学者と永世名人。1962年生まれの同い年の二人が、60代からの生き方や「死」について縦横に語り合った『還暦から始まる』(山中伸弥・谷川浩司著)より抜粋して、還暦以降の人生の楽しさや儚さについてお届けする。

『還暦から始まる』連載第22回

『アメリカでは「研究費を稼げる間は生涯現役」...ノーベル賞学者と永世名人が考える「人生100年時代のセカンドライフ」』より続く

谷川山中さんは、いまは研究者として生涯現役を目指していらっしゃいますけども、もし研究者でなければ、人生100年時代にセカンドライフをどんなふうに過ごされますか。「マラソンランナーは後半戦がきつい」と言われましたけれど。

山中何をするかな。まじめに医者をやっているかもしれないですね。

谷川一般の会社員の方々は、おそらくそれを迫られているんじゃないでしょうか。退職後の20年、30年をどう生きるのか。

山中僕の家内は臨床医で、祖母から父親へと受け継がれたクリニックを、家内が受け継いだので3代目なんです。祖父じゃなくて祖母が始めました。家内を見ていると、本当に生涯現役じゃないですか。自分のペースで続けていて、いまは僕よりよっぽど忙しそうです。そういう意味では手に職をつけるというのは大切ですよね。

谷川お医者さんは確かにずっとできますものね。

山中たとえ戦争になっても大切な仕事ですから。

谷川私たち棋士は現役を引退しても、年齢にあまり関係なく解説や立ち会い、原稿執筆といった仕事で社会とつながっています。少しずつ仕事の量を減らしていくことも可能なので、それは恵まれているかなとは思います。