子どもの成績を上げたいなら「間取り」でやってはいけないこと

AI要約

日本の住まいの満足度は33%で、不満の理由は「間取り」であることが判明した。一見おしゃれで素敵に見える間取りにも、隠れた暮らしにくさが存在する。この記事では、物病院を経営する獣医の斎藤さん一家の間取りを例に、暮らしにくさのポイントを解説している。

斎藤さん家族の間取りには、スタディスペースから始まり、内玄関、帰宅動線、予備室、吹き抜け、トイレなどに暮らしにくい要素が含まれている。これらのポイントを改善することで、より快適な住まいが実現できる。

改善案では、スタディスペースや内玄関、予備室、吹き抜け、トイレなどの配置や機能を見直し、より使いやすく快適な間取りにする提案がなされている。

子どもの成績を上げたいなら「間取り」でやってはいけないこと

日本の住まいの満足度は33%……不満の理由は”間取り”でした。一見すると、おしゃれで素敵そうに見える間取り。でもそこには大きな落とし穴が隠れていることも。住んでみないとなかなか見えてこない隠れた暮らしにくさ。『この間取り、ここが問題です!』では、いままで3000件以上の間取りを診断してきた一級建築士・船渡 亮氏が、25の具体的な間取りからその問題点を指摘。より住みやすい間取りを提案します。

物病院を経営する獣医の斎藤さん夫妻は、子供が成長し子供部屋が必要になったため家を建てることにしました。 10年前に建てた動物病院併用住宅の2階に住んでいますが、夏暑くて冬寒いのがストレスです。そのため、高気密高断熱にこだわった地元の工務店で建てることにしました。

文武両道の斎藤さん家族は、子供たちは朝5時30分に起床して勉強、朝食後には、親子でバドミントンや筋トレをします。計画間取りでもダイニングに隣接して4・2帖のスタディスペースがあります。スタディスペースには造作カウンターを設置し3人同時に使え、子供だけでなく親が趣味や仕事で使うこともできます。

ダイニング上には吹き抜けがあり開放感を演出、リビングの南にある予備室は、子供の遊び場や筋トレ、宿泊用に使うために用意しました。パントリーや内玄関もあり収納量も確保できています。玄関の近くに洗面所もあり、帰宅後、すぐ手洗いもできます。

依頼人の家族構成

■ 夫:獣医(40 代)、妻:獣医(40 代)、   長女(9)、長男(7)

■ 家事分担:夫は洗濯干し、妻は料理・掃除・洗濯物畳み

■ 洗濯方法:外干し、室内干し

■ 出勤前に子供と勉強や運動を行うのが日課

斎藤さんの希望をすべて満たしているように見えるのですが、じつは多くの「暮らしにくさ」が隠れています。まずはスタディスペースに注目して解説します。

スタディスペースですが、キッチンから遠く視線が届きにくいためサポートがしにくいです。自分で集中して勉強できる子供には向きますが、それなら2階の子供室で十分です。

また多くの小学校で教科書の音読を宿題にしていますから、親は子供の音読を聞いて評価する必要があります。そのための時間として、夕飯の準備や片付けをしながら聞く親も多いのですが、この位置では声も聞こえにくくお互いの顔も見えません。その結果、ダイニングで音読、となりそうですが、それなら他の宿題もテーブルでしたくなります。

スタディスペースは、キッチンで家事をする親との関係を考えて配置しないと使えません。実際、配置が悪いために、スタディスペースが物置になっている事例はたくさんあります。理想は、改善案のようにキッチン延長線上の配置です。これなら家事をしながら子供の様子がわかりサポートしやすいです。また勉強道具だけでなく食品等も収納できそうです。

この間取りには他にも5つの暮らしにくさが隠れています。ヒントは「内玄関」「帰宅動線」「予備室」「吹き抜け」「トイレ」です。間取りを見直して、「暮らしにくさ」を発見してみましょう。

ヒントは「内玄関」「帰宅動線」「予備室」「吹き抜け」「トイレ」でしたが、見つかったでしょうか? 早速、5つの暮らしにくさについて解説します。

(1)内玄関が狭くて使いにくい

内玄関としてのシューズクロークを通る帰宅動線ですが、玄関幅が80程度と狭いので靴の脱ぎ履きがしにくいです。並んだ靴を蹴飛ばす横方向からの動線になってしまうのも問題です。斎藤さん自身は内玄関を希望していないので、改善案では中止して、一間幅の玄関にしています。

(2) 複雑で長い帰宅動線

帰宅した家族は、シューズクロークで靴を脱ぎトイレ横の手洗いで手を洗い、ホールに戻ってからリビングに入るというかなり遠回りをすることになります。この動線、遠いだけでなく、家族の帰宅もわかりにくいです。家族がリビングに入ってくれればいいですが、そのまま2階に上がってしまった場合には、キッチンから誰が帰宅したのかを認識できません。改善案ではリビング階段を採用することで、家族の出入りがわかるようにしています。

(3)特等席にある予備室

モッタイナイ! という印象を受けるのが、予備室の位置です。南東の明るい位置に配置されていますが、家族が集まるリビングには、南面開口は部屋の角に一間の掃き出し窓(1・6m×2・0m)しかありません。一間の掃き出し窓は、26帖のLDKにしては小さいです。

またダイニングキッチンは北東側にあって朝日は入りませんので、朝食時は暗いため照明を点けなければなりません。このようになるのは、部屋ごとの優先順位が明確ではないからです。通常は、玄関や予備室よりLDKのほうが日当たりの優先順位が高いので、改善案では、南側に東西に長くLDKを配置して、玄関と予備室は北側にしました。

(4)日射取得できず開放感の効果も少ない吹き抜け

北側の吹き抜けがあることで、2階の様子がわかったり、「ごはんできたよ!」という声掛けはしやすいですが、冬場の直射日光を入れることは期待できません。またデザインとしても、ダイニングの端なのでLDK全体の開放感をアップさせるような効果は限定的です。

改善案では、南側に吹き抜けを設置し、冬期でも一日中、太陽光がリビングに入るようにしています。またリビング中央なので部屋全体の開放感にも寄与しています。

(5)トイレがダイニングに近い

1階のトイレは、玄関脇にあって独立していますが、スタディスペースとダイニングに接する形なので、使用中の音が気になるかもしれません。壁を遮音にすることでも解決できますが、改善案では、他の部屋から離れた、音が気にならない位置にしました。

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