指が変形する「へバーデン結節」は最新治療で進行を食い止める

AI要約

へバーデン結節は、指の爪の真下にある第1関節(DIP関節)に現れる指の変形性関節症で、痛みや腫れ、指の変形が特徴。

主な原因は加齢と指の酷使であり、女性の更年期に発症しやすい。起因は異常な血管「モヤモヤ血管」の増殖である。

治療法として、近年注目されている動注治療があり、効果が高く副作用が少ない。手軽に受けられるため悩む人は検討してみると良い。

指が変形する「へバーデン結節」は最新治療で進行を食い止める

 指の関節が痛くなったり、赤く腫れると真っ先に関節リウマチを疑う人は少なくない。しかし、梅雨の時季に痛みが悪化するなら「へバーデン結節」の可能性が高いという。国内の患者数は推定300万人とされ、40代以降の女性に見られやすいのが特徴だ。有効な治療法はあるのか? 「オクノクリニック」総院長の奥野祐次氏に聞いた。

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 へバーデン結節は、指の爪の真下にある第1関節(DIP関節)に、痛みや腫れといった症状が現れる指の変形性関節症だ。ほかにも手指のこわばりや、人によっては第1関節付近に水ぶくれのような粘液嚢腫(ミューカスシスト)が生じるケースも見られる。炎症が長期間続くと、指が横方向へ変形したり屈曲して、外見的な悩みを抱える人も少なくない。

「気圧が低い梅雨の時季は、体の外側からかかる空気の圧力が低下しやすく、関節内の圧が高まり痛みが強まります。ストッキングをまくり上げたり、パソコンのキーボードを打つ、ペットボトルの蓋を開けるなど、第1関節に負担がかかる動作で痛みが増し、日常生活に支障を来しやすい」

 へバーデン結節を発症する主な原因は、加齢と指の酷使だという。とりわけ女性の場合、更年期の時期になると女性ホルモンであるエストロゲンが減少するが、このエストロゲンには抗炎症作用や血管を正常に保つ働きがある。エストロゲンの減少により関節に炎症が起こると、炎症や腫れが長引き、慢性化しやすいという。実際、へバーデン結節と診断されるのは40代以降の女性に多く、男性の6倍発症しやすいという。

 ただし、根本的な原因は異常な血管である「モヤモヤ血管」の増殖だという。

「人間の体は本来、異常な血管をつくらないように保たれていますが、同じ部位に繰り返し負担がかかるとその部位の組織は傷つき、修復させようと新たに毛細血管がつくられます。これが『モヤモヤ血管』で、一時的につくられた血管なため非常にもろく、水や線維が漏れ出して赤みや腫れを引き起こします。また血管が増えると必然的に神経も増えるので、過敏になった神経により痛みが生じます。モヤモヤ血管は40歳を過ぎた頃からできやすく、近年はスマホの使いすぎによる指の酷使も関係しているといわれています」

 診断は、視診で赤みや腫れ、変形を確認するほか、手指の変形を起こす関節リウマチと鑑別するため血液検査が行われる。確定診断にはレントゲンが用いられる。

■7割は3年後も症状改善が継続

 これまでへバーデン結節に対する治療は、湿布薬や痛み止めの処方といった対症療法が基本で、進行を食い止める方法はないとされていた。それが近年、有効な治療法として注目されているのが「動注治療」だ。奥野氏が2014年に開発した方法で、モヤモヤ血管に直接薬剤を注入して痛みを緩和させるという。

「動注治療は、手首の橈骨動脈、または肘の上腕動脈の位置を超音波で確認した後、抗生物質からできた薬剤を注入し、モヤモヤ血管を詰まらせることで痛みや炎症を抑える方法です。所要時間は1~2分と短く、注射針も採血で使うものよりも非常に細いので、痛みはほとんどありません。さらに、当院で動注治療を受けた100人にアンケート調査を行ったところ、9割は症状の改善が見られ、7割は3年後も症状の改善が続いていたと回答されています。完治まではいかなくても、進行を遅らせて指の変形を予防できる画期的な治療法といえます」

 現在、動注治療は国内の60以上の医療機関で導入され、実施された8000件の症例のうち、重篤な副作用は1件も報告されていない。

 動注治療の費用は、オクノクリニックの場合、片手2万5000円、両手3万5000円(いずれも税別)だ。長引く痛みに悩まされているなら、検討してみてはどうか。