《夏に乱れやすい自律神経》更年期、夏バテへの影響も 整えて不調を改善する方法

AI要約

自律神経が夏に乱れやすく、夏バテや更年期症状の悪化の原因になることがある。

体内時計を整えることや腹式呼吸を行うことで自律神経のバランスを整えることができる。

入浴も自律神経を整える効果があり、温冷交代浴を試してみると良い。

《夏に乱れやすい自律神経》更年期、夏バテへの影響も 整えて不調を改善する方法

自律神経が乱れやすい夏は、夏バテを起こしたり更年期症状が悪化したりと不調を感じやすい。そこで、夏を元気に過ごすために、薬剤師の山形ゆかりさんに自律神経の働きを解説してもらい、対策のためのセルフケアや食事、漢方薬についても教えてもらった。

【目次】

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自律神経は体を興奮状態にして活発に動かす交感神経と、リラックスさせて休める働きをする副交感神経で成り立っており、両者がバランスをとって体温調整などの働きをしているものです。自律神経が乱れると、だるさや食欲の低下、不眠、イライラなどの夏バテの症状が起こります。

更年期症状も自律神経と密接に関係しています。自律神経をコントロールしている脳の視床下部は、女性ホルモンの分泌も司っています。更年期になり女性ホルモンの分泌量が低下すると指令通りホルモンを分泌させようとして視床下部の働きが過剰になり、自律神経もその影響を受けます。すると、体温調整がうまくできなくなってホットフラッシュが起こったり、交感神経が優位になってイライラしたり、更年期症状の悪化につながるのです。

気温の変化にあわせて交感神経と副交感神経のバランスを取り、体温を調整するなどの働きをしている自律神経は、夏の気温や湿度の高さ、冷房での冷えすぎなどにより、乱れやすくなります。

とくに、気温が高い外と冷房が効いた室内を行き来することが増える暑い日は、寒暖差に対応しようとして自律神経の負担が大きくなりがちです。

また、交感神経は体を興奮状態にして活発に動かし、副交感神経は体をリラックスさせて休める働きがあります。強い紫外線や暑さによる脱水などによって、交感神経が刺激されると体が興奮状態になり、自律神経のバランスが交感神経に傾きやすくなります。このような夏特有の気候が刺激になることも、夏に自律神経が乱れる原因のひとつです。

交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズに行われるようになると自律神経のバランスが整いやすくなります。そこで、自律神経の切り替えを手助けする方法を知っておきましょう。

◆体内時計を整える

体内時計は自律神経の働きを調整する役割があり、昼は交感神経が、夜は副交感神経が優位になるように調整しています。そのため、体内時計を整えることは、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにするのに効果的です。

体内時計をリセットするために、朝は、起きたらすぐに太陽の光を浴びる、コップ1杯の水を飲む、朝食を抜かないといったことを意識しましょう。

体内時計を整えるには、寝る前に副交感神経を優位にする手助けをすることも大切です。体内時計が乱れていると、夜になっても交感神経優位の状態になり、なかなか副交感神経が優位になりません。ラベンダーやゼラニウム、ネロリなどの香りを嗅いだり、軽いストレッチやマッサージで筋肉の緊張をほぐしたりして体をリラックスさせ、副交感神経を優位にする手助けをしましょう。交感神経を刺激するスマホやテレビの使用を避けることも重要です。

また、体内時計のリセットには睡眠が大きく関わっており、睡眠不足の状態では体内時計が乱れてしまいます。とくに夏は睡眠時の冷房をタイマーにすると、冷房が切れた後に暑くなって夜中に目が覚めやすく、睡眠不足に陥りやすくなります。冷房をつけっぱなしにするか扇風機などを併用し、快適な睡眠環境といわれる室温26℃、湿度50~60%(環境省「 ヒートアイランド対策の計画的実施に関する調査報告」)をキープして睡眠不足を防ぎましょう。

ほかにも、食事や入浴の時間、就寝前のルーティンなどを決めておくのも、体内時計を整えるのに役立ちます。

◆腹式呼吸を行う

深呼吸には、胸式呼吸と腹式呼吸の2種類があり、胸式呼吸は交感神経を活発にし、腹式呼吸は副交感神経を活発にする働きがあります。

交感神経が優位になりやすい夏は、以下のやり方を参考に腹式呼吸を習慣として取り入れてみましょう。

【1】背すじを伸ばして座り、おへそに空気をためていくイメージで、鼻からゆっくり息を吸いこむ。

【2】吸うときの倍の時間をかけ、お腹をへこませながら、口からゆっくり息を吐きだす。

【3】【1】【2】を10~20回ほど繰り返す。

腹式呼吸を意識してやったことがない人は、1セット5回くらいから始めましょう。正しい腹式呼吸をするには、息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐くときはお腹がへこむことを意識し、胸部は動かないようにすることが大切です。寝転んでするとお腹が上下する感覚を感じやすく、正しく腹式呼吸できているか確認しやすくなります。

◆入浴で自律神経を刺激する

自律神経を整えるには、入浴も大切です。入浴はシャワーで済まさず、37~39℃のぬるめのお湯に10~15分程度浸かると副交感神経が刺激されます。これにより、副交感神経を優位にでき、自律神経を整えることにつながります。

「夏は暑くて、お湯に長く浸かるのは避けたい……」という場合は、自律神経のバランスを整える効果が期待できる「温冷交代浴」を取り入れてみてはいかがでしょうか。お湯に浸かる温浴と水を浴びる冷浴を交互に行う入浴法で、副交感神経と交感神経が交互に刺激されるため自律神経のバランスを整えることにつながります。