重度の知的障害と自閉症をもつそらくん19歳・たからくん16歳の兄弟を育てて。障害があってもなくても、一緒に育つことで子どもが変わるということ。柴田愛子さん×浅川素子さんインクルーシブ子育て対談

AI要約

自主幼稚園を運営する柴田愛子さんと、障害のある子供たちの余暇サークルを主宰する浅川さんによるインクルーシブ子育て対談を通じて、子供の成長や子育ての醍醐味が語られる。

浅川さんは自身の息子たちの障害を通じて愛子さんの子育て方法を学び、子供が互いに学び合う存在であることを強調。子供同士の関係性が重要であるとの考えを共有する。

愛子さんは「インクルーシブ」社会を提唱し、人間は本来群れて共に生きるべき存在であると語る。孤独感が増したコロナ禍の中で、子育ての難しさや孤立を感じる親が増えたと指摘。

重度の知的障害と自閉症をもつそらくん19歳・たからくん16歳の兄弟を育てて。障害があってもなくても、一緒に育つことで子どもが変わるということ。柴田愛子さん×浅川素子さんインクルーシブ子育て対談

「子どもの心に添う」を基本姿勢とした自主幼稚園「りんごの木」を運営している保育者の柴田愛子さん。自閉症の息子たちの日々を描いたドキュメンタリー映画「そらくんとたからくん」の続編が自主上映巡回中の、障害のある子たちの余暇サークル「リズムの会」代表の浅川さん。子どもの中でこそ子どもは育つことを実感する、目からウロコのインクルーシブ子育て対談です。

浅川さんの二人の息子さん(現在、そらくん=19歳・たからくん=16歳)は、二人とも重度の知的障害と自閉症を併せ持って生まれてきました。そんな浅川さんは、ご自身の子育ての中で、愛子さんの子どもを見つめるまなざしから多くのことを学び、子育てを楽しむコツを教えてもらったといいます。その思いを分かち合いたい、と浅川さんを中心に『一緒に育てば大丈夫』というテーマで対談が企画されました。

子どもや子育てを通じて生まれた様々なエピソードや思いが語られ、心がほどけていくひととき。それは、大人も子どもも幸せに生きるためのコツを学び合う時間でもありました。

浅川さん-子どもの成長の早い・遅いや育てやすさ・育てにくさで比較され、そのことで子育てや保育に不安や心配を抱えている人が増えているような気がします。

子どもが乳幼児期の時は、親が「子どもを育てなきゃ」「ちゃんとしたお母さんにならなきゃ」と私自身も不安でいっぱいでした。でも、今振り返ってみると、子どもの方が「子ども同士の中」で育っていくんですよね。気がつけば、私も子どもからいろいろ教えてもらってきたと思います。

■仕切りを作って、仕分けしている社会で生きるのは不自然なこと。コロナで子育ての孤独感が増したと思います

愛子さん-このところ「インクルーシブ」という言葉をよく聞きますよね。それって、あえてインクルーシブって言わないと駄目な社会になったっていうことでもあると思うんですよ。私は元々、人間という動物は地球上に生まれて「群れて生きていく動物」と思ってるのね。

「群れる」ってことはどういうことかっていったら、迷惑かけたりかけられなかったり、頼ったり頼られたりっていうその関係性があってこそ、心地よく生きていけるってこと。納豆みたいなものよ(笑)。一つ一つだと味がないんだけど、かき混ぜて美味しくなる。あれに近いと私は思ってるんですけどね。それなのに、仕切りを作って「これが発達障害」「これは年寄り」。年寄りは年寄りで何施設に行かなくちゃいけないとか、一生懸命仕分けをしている社会になって。だから逆に群れの中で孤独感を抱いていかなくちゃいけない。

特にコロナになってからの子育てはすごくつらい思いをされた方は多かったのではないかしら。子育ての味方になるのはスマホだけ。実家にも帰れない。だからお母さん同士のコミュニケーションが苦手になって、盛り上がる機会がないのよね。「バザーでもしない?」とか、何かやろうよっていうのがなくなっちゃったじゃない。

そういうことを考えても、やっぱり人間が不自然な生き方をしてるとしか私は思えないのね。だから大人にとって「よくわからない子」が目立ってしまう。誰だって自分の子が障害を持って生まれるなんて思わないじゃない。浅川さん自身は、子どもたちの障害のことをどんな風に知っていったの?