【社会学者が解説!】「選択的夫婦別姓」「同性婚」日本で実現しないのはなぜ?
1980年までは未婚率が低かったが、1990年以降急激に上昇し、2015年に男性23.4%、女性14.1%となった。
日本は同性婚を認めておらず、選択的夫婦別姓も導入されていない。同性婚が違憲と判断される裁判が進行中。
選択的夫婦別姓制度に62%が賛成しており、姓が家を象徴するという考え方は過剰とされている。
ニュースやSNSなどでよく見聞きするキーワードの中から、バイラ世代が知っておきたいワードをピックアップ。今回は生涯未婚率、選択的夫婦別姓、同性婚について、永田夏来さんが家族社会学者の視点から鋭く解説!
●解説していただいたのは
永田夏来さん
兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授。家族社会学の観点から、結婚・妊娠・出産と家族形成についての調査研究を行う家族社会学者。著書に『生涯未婚時代』(イースト・プレス)など。
45~49歳と50~54歳の未婚率の平均値から計算した、50歳時点での未婚率。総務省の調べによると、1980年までは男女とも5%未満と低く、日本は「皆婚社会」といわれてきた。しかし、1990年以降急激な上昇を示し、2015年には男性23.4%、女性14.1%に。
「結婚経験を持たない中高年に加えて、結婚を人生設計に組み込まない若い世代も登場してきています。私たちは、恋愛や結婚、家族についての画一的な『あるべき姿』や社会の仕組みそのものを再検討する必要があるのではないでしょうか」(永田さん、以下同)
日本はG7で唯一、同性同士の結婚(同性婚)が認められていない。全国5カ所で同性婚(結婚の平等)を求める裁判が行われ、4つの判決で「同性婚を認めないことは違憲」と判断が下された。
「いまだに認められていないのは、遅すぎますよね。選択的夫婦別姓も同性婚も、やらない理由を挙げるほうが難しいくらい。これは私の友人の言葉ですが、『家族や子どものことを考えるのは未来を考えること』。高度経済成長期の経験や家制度の幻影にとらわれて、未来志向での政治的判断ができていないことの弊害だと思います」
名字を変えずに法律婚ができる制度。片側が名字を合わせなければ法律上の結婚ができない国は日本だけ。2024年4月に行われたNHKの世論調査では62%が導入に賛成。
「反対派は『家族や家制度が破壊される』と言いますが、それは誤解。代々続く戸籍に妻が入ることで姓が変わる=家に属するという戦前の家制度は、戦後の法改正ですでに解体され、結婚後は新たな戸籍を作る形へ変化しています。今さら『家』を理由にするのは過剰な意味づけでは?と思います」
取材・原文/国分美由紀
※BAILA2024年8・9月合併号掲載