【毎日書評】世界一の美食家が大切にしている「美食」を楽しむための心得

AI要約

食材に対する関心や食事を通じた価値観、外食に興味を持つ著者の考え方が紹介される。

ガストロノミーを通じて食を深く楽しむことの重要性が述べられる。

美食における文化的な要素や評価基準の難しさが考察される。

【毎日書評】世界一の美食家が大切にしている「美食」を楽しむための心得

食材に強い関心を抱いているとか、友人や家族など、誰かと食べることに価値を置いているとか、あるいは自分でつくって食べることが好きだとか──。“食”へのこだわり方は人それぞれです。

『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(浜田岳文 著、ダイヤモンド社)の著者の場合は、食のなかでもとくに外食に興味を持っているのだとか。そして、食を通して料理人というクリエイターの作品を鑑賞し、享受することを目的にしているのだそうです。

そんな考え方や経験に基づく本書は、より深く豊かに食を楽しむための案内。ただし、「美食=贅沢なもの」という意味ではなさそう。著者が伝えたいことを正確に表現するなら、「ガストロノミー(Gastronomy)=食と文化の関係を考察すること」に行き着くようなのです。

美味しいものを食べるという喜びがあることは、人生を豊かにする。しかし、だからといって、ただ単に美味しいと評判の店に行けばいいということにはならない。

美味しさがゴールではなく、どう美味しくしているのか、なぜその地で食べるのか、どんな歴史的な背景があるのか、どんなストーリーがつむがれているのか……。

そういうものをちゃんと含めて楽しむことが、文化的に食べるということだと思うのです。そしてそれこそが、「ガストロノミー=美食」が重要な理由になるのだと思います。(「はじめに」より)

もちろん食に限らず、文化的価値の評価は簡単ではなく、それを定量的にはかることはできません。ましてや絶対的な基準も存在しないけれど、少なくともその時代とコミュニティにおける価値観は漠然と共有されています。

時と場所が変われば価値基準は異なってきますし、共有されている価値観に違和感を覚える人がいても当然。しかし、だからといって相対主義に陥り、文化的価値の評価を放棄すべきではないと著者は強調するのです。

とはいえ、美食に関する概念は実際のところ難しそうでもあります。そこできょうは第2章「美味しさに出会う 美食入門」のなかから、「心得」の部分に焦点を当ててみたいと思います。