ラーメン店の多い県ほど、脳卒中死亡率が高い…自治医大の研究者が考察する「統計的に有意な差」が出た背景

AI要約

研究によると、ラーメン店の数が多い都道府県ほど脳卒中の死亡率が高いことが示された。

ただし、この結果は直接的な因果関係を示すものではなく、他の要因も考慮する必要がある。

重症の脳卒中の割合が高い可能性も指摘され、生活習慣や食事内容の影響が示唆されている。

■「ファストフード」や「うどん・そば」は無関係なのに

 ラーメン店の数が多い都道府県ほど、脳卒中の死亡率が高い。そんな驚きの研究を、自治医科大学医学部内科学講座神経内科部門の松薗構佑講師らが2019年、英国の栄養学専門誌『Nutrition Journal』に発表した。

 松薗講師らは、NTTタウンページに許可・協力を得て、4種類の外食店「ラーメン」「ファストフード店」「フランスおよびイタリア料理店」「うどんおよびそば店」の店舗数の電話登録を利用し、都道府県ごとに男女別人口あたりの店舗数を算出した。そして厚生労働統計協会の「国民衛生の動向」(2015年)を用いて「脳卒中」と「心筋梗塞」による死亡率を集計し、4種類の外食店との関係を調べた。その結果、「ラーメン店の数」と「脳卒中の死亡率」に統計的に有意な関連性があったという。つまり、「人口あたりのラーメン店の数が多い都道府県ほど、脳卒中の死亡率が高い」結果が示されたのだ。

 研究報告に基づき、「人口あたりのラーメン店舗数が多い都道府県」と「脳卒中死亡率が高い都道府県」を下記に挙げよう。

 虚血性心疾患との関連性も調べているが、そちらでは有意な差は見出せず、またほかの3つの外食店(ファストフード店、フランスおよびイタリア料理店、うどんおよびそば店)でも脳卒中や心筋梗塞などとの関連が示されなかった。

■「ラーメンを食べると脳卒中で亡くなる」ではない

 ちなみに米国ではファストフードと病との研究報告が複数あり、地中海食と呼ばれるフランス料理は動脈硬化を予防することで知られている。日本では讃岐うどんが地域食として有名な香川県は糖尿病患者が多いが、それらは結果には反映されなかった。松薗講師がこう解説する。

 「この研究はあくまで『店舗数』なのです。うどんとそばはだいたいカテゴリーが同じですので、そばとうどんの店舗、それぞれでは検証できません。それに関連して、有意な関連があったラーメン店も、『ラーメンを食べると脳卒中で亡くなる』という結果が示されたものではないということです。食品との因果関係を直接証明した研究ではありません」

 ラーメン店に行っても、餃子やチャーハンなど他のサイドメニューを注文することもあり、それらが関係しているのかもしれない、と松薗講師が続ける。

 「しかし、いずれにしてもラーメン店舗がそれだけ多いということは、その地域にラーメンの需要があるということ。そしてラーメンは一般的に高塩分食です。医学的に脳血管に悪影響を与える塩分を摂りすぎていいことはありません。過剰な塩分は血管への毒性が指摘されています。そういった食事を好む地域は脳卒中死亡率が高い傾向にあると考えてもいいのではないでしょうか」

■「重症の脳卒中の割合が高いのかもしれない」

 また研究結果を見る上で、もう一つ気をつけなくてはならないことは「脳卒中の死亡率」を示しているという点。「発症率」とは違うということだ。同大学同部門の藤本茂教授が補足してくれた。

 「発症率と死亡率は異なります。『ラーメンを食べると脳卒中が起きる』ではありません。一般の方はそこを勘違いしないでいただきたい。今回心疾患では有意差が出ませんでしたが、心疾患には心出血はありません。一方で脳卒中には脳の血管に血栓が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れて起こる脳出血があり、死亡率が高いのは脳出血のほうです。そういうことを考えると、研究結果で死亡率が高いということは、重症の脳卒中の割合が高いのかもしれません。今後の検証が必要ですが、ラーメン好きの多い地域は重症の脳卒中が起きている可能性があるということです」

 繰り返しになるが「ラーメンが悪」と決まったわけではない。その地域の「ラーメンの消費量」ではないのだ。ラーメン店は夜まで営業する店が多く、夜中にラーメンを食べるような生活習慣が悪影響を及ぼしたとも考えられる。

 「夜にラーメンなどの高カロリー食を摂るというのは、あまりいい生活習慣ではないですよね。私もよく食べましたが……」

 と、博多出身の藤本教授が笑う。