安藤優子×浜田敬子×星薫子が見た「母・妻・娘」ケアの担い手として女性が受けた差別

AI要約

5月下旬、イランのエブラヒム・ライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡し、次期大統領の進展に注目が集まっている。

ノンフィクション『白い拷問 自由のために闘うイラン女性の記録』では、拷問された女性の証言を通じてイランの抑圧状況が浮かび上がり、ジャーナリスト達が厳しい現状について討論する。

『白い拷問』とは、拷問の手法であり、独房での過酷な状況が具体的に説明され、女性に対する拷問問題が浮き彫りにされる。

安藤優子×浜田敬子×星薫子が見た「母・妻・娘」ケアの担い手として女性が受けた差別

 5月下旬、イランのエブラヒム・ライシ大統領がヘリコプターの墜落事故で死亡したというニュースが流れました。世界に衝撃が走ったこのニュースに興味を持ち、次の大統領は誰になるのか進展を気にしている日本人はどのくらいいるでしょうか。

イランの人権活動家ナルゲス・モハンマディによる獄中手記と、ナルゲスが獄中で行った「不当に収監された女性たち」へのインタビューからなるノンフィクション『白い拷問 自由のために闘うイラン女性の記録』には、「暴虐の責任者のひとり」としてエブラヒム・ライシ氏の名が出てきます。このナルゲスの記録を題材にジャーナリストの安藤優子さん、浜田敬子さん、翻訳した星薫子さん3人の熱い言葉が飛び交った特別鼎談第1回では、「子持ち様」問題を中心に、「日本の社会を苦しめる対立と分断」について考えました。

 『白い拷問』鼎談<2>では、母・妻・娘、様々な立場で「ケアの担い手」である女性に対する拷問の問題点を語り合います。

  本のタイトルとなっている「白い拷問」とは何か。「理解を深めるための序文」のなかに次のような説明がある。

「白い拷問の苦痛は、刑務所の構造のみならず、看守や尋問官のふるまいによっても増幅する。囚人は独房の照明を操作されて昼夜の感覚を失い、睡眠パターンを妨げられる。独房を出るときも目隠しをされる。独房や尋問室で身体的接触がすべて遮断されると、感じられるのは痛みだけ、つまりコンクリートの床と壁、そしてゴワゴワの毛布だけという状態になる。独房で唯一臭いを放っているのは不衛生きわまりないトイレで、これが囚人の嗅覚を痛めつけることも計算ずくである。食事は味気なく、毎日同じで、金属のボウルに入ったものが生ぬるい状態で出され、お茶はプラスチックのカップに入っている」(『白い拷問』より)

 安藤優子(以後、安藤):「イランで女性に対してどのような抑圧が行われているかは、世界的な共通認識としてみなさん持っていると思うんです。ですがこの本で、投獄された14人の女性の詳細な証言を読み、わかった気になっていただけでつかめていなかったんだなと気づかされました。

 人権を抑圧するために行われる拷問について、細部まで日本のメディアで報道される機会はなかなかありません。恥ずかしいことに私も知る機会がなかった。感覚を奪い去られることで恐怖を引き起こし、体のあり方を狂わせ、健康を蝕み、心の傷だけでなく神経疾患、心臓発作までも引き起こし生涯にわたって後遺症を残す……執拗な拷問のやり方や手段があるということを知らなかったことに罪深さを感じました」