「カニに感謝」女子高生、未知の微生物を発見 カニ殻からバイオプラ前進

AI要約

兵庫県豊岡市の近大付属豊岡高校3年、池上(いけがみ)十和子さん(18)がカニの殻をエサにして、バイオプラスチックの原料を生成する微生物を発見した。

環境保全に役立てるため、地元の名産品であるカニの殻を活用し、バイオプラスチックの開発に成功した。

高校生を対象とした世界最大の「科学のオリンピック」で高い評価を受け、環境への貢献が評価されている。

「カニに感謝」女子高生、未知の微生物を発見 カニ殻からバイオプラ前進

兵庫県豊岡市の近大付属豊岡高校3年、池上(いけがみ)十和子さん(18)がカニの殻をエサにして、環境への負荷が少ないとされるバイオプラスチックの原料を生成する微生物を発見した。本来なら廃棄される地元の名産品を環境保全に役立てるという研究成果。高校生を対象とした世界最大の「科学のオリンピック」で上位入賞するなど国内外で評価されており、池上さんは「カニに感謝」と話している。

環境問題に関心があった池上さん。研究のきっかけは、中学3年の夏休みの出来事だった。「自然界にプラスチックのようなものがあれば、環境に優しい素材がつくれるのでは」と考えていると、たまたま見たセミの透明な羽がプラスチックのように感じられた。

セミの羽には「キチン」と呼ばれる糖の成分が含まれていることが分かり、同様の成分はカニやエビなどの甲殻類の殻にもあることを知った。豊岡市内の城崎温泉などではカニを楽しむ観光客も多く、廃棄される殻は大量にある。うまく利用できないか-。

着目したのが、バイオプラスチックの原料の一つである「ポリヒドロキシアルカノエート」(PHA)という物質。微生物の中には、糖などを分解してPHAをつくるものがある。「廃棄される殻からPHAをつくる微生物を見つけることができれば、コストをかけずにバイオプラスチックができる」と考えた。

このアイデアを高校1年のとき、東大のプログラム「グローバル・サイエンス・キャンパス(GSC)」に応募。採用され、昨年3月から本格的な研究がスタートした。

生物学の専門的な知識はなかったが、東大大学院特任教授の原啓文さん(応用生命工学)が指導。兵庫県香美町の香住漁港で、カニ加工場のカニ殻廃棄場所から土壌を採取。研究室にサンプルを送り、微生物を見つける培養実験を重ねた。

月1回の上京のほか連休を利用して研究室へ。研究室での会話などはすべて英語だったが、英語が得意な池上さんは「十分対応できた」(原さん)という。

実験の結果、土壌からPHAを生成する微生物を発見し、プログラムで行われた研究の中で最高の文部科学大臣賞を受賞。「高校生・高専生科学技術チャレンジ(JSEC2023)」でも最高の文部科学大臣賞を受賞し、2度目の同賞という快挙を成し遂げた。