日本では「AIゆりこ」、世界では…? 選挙イヤーで注目される「生成AI」の選挙活動ツールとしての活用法

AI要約

小池百合子都知事がAIコンテンツを活用した選挙キャンペーンを展開している。

世界各国でも生成AIを用いた政治家のアバターが選挙活動に利用されている事例が増えている。

生成AIを活用した政治キャンペーンは一定の成果を上げているが、倫理的な論議も呼んでいる。

日本では「AIゆりこ」、世界では…? 選挙イヤーで注目される「生成AI」の選挙活動ツールとしての活用法

 今月12日、3期目に向けて都知事選への立候補を表明した小池百合子氏(現職)が、翌13日に自身のX(旧Twitter)アカウントで「AIゆりこ」の動画を公開した。

 緑色のジャケット姿の「AIゆりこ」は生成AIで製作されたと見られるが、その容姿や声は確かに本人と似ており、ニュースキャスター時代の同氏を彷彿させる。若干たどたどしい口調ながらも「子育て支援」など小池都政の実績をアピールしており、1日で約700万アクセスを記録したという。

 今月20日の告示前ではあるが事実上は選挙活動ツールの一環と見られ、今後「AIゆりこ」の動画は(来月7日投開票の)選挙終了まで更新されるという。

 今年は日本だけでなく、世界数十ヵ国で数十億人の有権者が投票する選挙イヤーとなり、そこでの生成AIの活用が(良い面でも悪い面でも)注目されている。

 たとえばインドでは既に4月19日から6月1日までに7段階(地域)に分けて総選挙が実施され、9億6800万人以上が選挙登録し、そのうち6億4200万人が実際に投票した。この大規模な選挙で辛勝したナレンドラ・モディ政権が3期目を担うことになった。

 インド全土では22の公用語をはじめ、ゆうに数百種類の言語が使われていると見られている。このため複数の候補者の選挙陣営は、予め生成AIで製作したチャットボットを用意した。これが選挙公約などを各地域の言語に自動翻訳し、候補者そっくりの声で有権者に電話メッセージを伝えて自身への投票を呼び掛けた。

 生成AIで製作されたモディ首相のアバターもスマホアプリ「WhatsApp」上で公開された。このアバターは画像にやや不自然な点が見受けられるものの、モディ首相そっくりの容姿と声で短い選挙メッセージを有権者に伝えた。しかも各有権者の名前を呼んで語り掛けたという。

 また台湾では、1月に実施された総統選で(同じく生成AIで作られたと見られる)蔡英文氏(前総統)のアバターが何故か暗号通貨への投資を呼びかけるメッセージを発信したとされる。

 一方、2月に総選挙が行われたインドネシアでは故スハルト大統領の生成AIアバターがX上で公開されて自党への投票を呼びかけ、同じく2月に総選挙が実施されたパキスタンでは汚職の罪で刑務所に服役中のカーン元首相の生成AIアバターが選挙メッセージを読み上げた。当然ながら、これらは倫理的・道義的な面で物議を醸した。