がん患者が自分らしく生きるってどういうこと?

AI要約

がん治療に関する素朴な疑問について、がん研有明病院院長補佐の高野利実さんがQ&A形式で回答する。

「自分らしく生きる」というフレーズの意義や重要性について述べられている。

「自分らしく」とは何か、その考え方や捉え方について考察が行われている。

 がん研有明病院院長補佐の高野利実さんが、がん治療に関する素朴な疑問にQ&A形式でお答えします。

 「自分らしく生きる」というフレーズを、私はよく使います。

 私が2016年に書いた本の題名は、「がんとともに、自分らしく生きる」でした。

 たとえがんがあったとしても、一人ひとりの「その人らしさ」が失われることはないはずで、それを大切にしてほしい、という願いをこめたものです。

 「自分らしく」「私らしく」「あなたらしく」「その人らしく」という言葉は、世の中でもよくみかけます。

 今年3月にがん研有明病院主催で行ったイベント「AYA(アヤ)フェスタ」のテーマは、「がんになってもあなたらしく」でした。

 このコラムの連載でも、「自分らしく」という言葉はよく出てきますが、皆さんは、この言葉をどのように受け止めているでしょうか。

 私は、すべての患者さんに、楽しく、幸せに、穏やかに、不安なく、希望をもって生きてほしいと願っていますが、「こうであってほしい」というメッセージは、特定の価値観の押し付けになってしまうこともありますので、価値観が一人ひとりで違うことを前提とした、「自分らしく」という言葉を多用してきました。

 他人が決めたモノサシで評価するのではなく、一人ひとりが、その人なりの価値観で、「自分らしい」と思えるような生き方をしてもらえるといいな、というのが、私の思いです。

 ただ、

・「自分らしく」という言葉も、押し付けのように感じる。

・「自分らしく」と言われても、どういうことなのか自分にはよくわからない。

・病気がなかったときの自分のままでいなければいけないというプレッシャーをかけられているように感じる。

・もともと自分が好きではないので、「自分らしく」を肯定的に受け止められない。

 といったご指摘をいただくこともあります。

 言葉遣いの難しさも感じつつ、今回は、「自分らしく生きるってどういうこと?」を考えてみようと思います。けっして私の考えを押し付けるつもりはありませんので、これを読んでくださっている方も、「自分らしく」について、ご自分なりに考えていただければ、と思います。