衛星打ち上げ競争、H3は「半歩先」歩む 米欧では新型続々、中国は「年100機」

AI要約

日本の新型ロケット「H3」が本格運用段階に移行し、宇宙ビジネス市場で競争が激化している。

米、欧州、中国など各国が低価格な打ち上げを目指す新型ロケットを実用段階に突入させ、競争力を高めている。

内田敦主席研究員は、H3は先行しているものの、積極的な成功を重ねていく必要があると指摘している。

衛星打ち上げ競争、H3は「半歩先」歩む 米欧では新型続々、中国は「年100機」

日本の次世代主力ロケット「H3」は、1日の打ち上げ成功で本格的な運用段階に移行した。だが、急拡大する宇宙ビジネス市場で衛星打ち上げの受注増加を狙う各国の新型ロケットも、相次いで実用段階に突入。競争が激化している。(伊藤壽一郎)

米ユナイテッド・ローンチ・アライアンスの大型ロケット「バルカン」は今年1月、民間月探査機などを搭載し、初めて打ち上げに成功した。7月には、欧州のアリアンスペースが新開発した大型ロケット「アリアン6」も、小型衛星や実験装置を搭載して初めて打ち上げに成功。ともに、低価格な衛星打ち上げをアピールしており、H3のライバルといえる。

この背景について、宇宙ビジネスに詳しい三菱総合研究所の内田敦主席研究員は「衛星打ち上げビジネスは米スペースXの独壇場で、各国は競争力を高めるため最新技術で低価格な打ち上げを実現する新型機の開発を進めてきた」と解説する。

一方、中国も宇宙ビジネスでの覇権獲得を狙っている。国有企業の中国航天科技集団は2月、年内に長征8号などのロケット打ち上げを約100回実施する計画を明らかにした。これまでに数十カ国から衛星打ち上げを受注しており、さらなる拡大を目指している。

内田さんは「この激しい競争の中で、H3は半歩先を歩けている」と指摘する。今年に入ってから、2号機、3号機と順調に打ち上げ成功を重ねることができたためだ。だが、海外勢も今後、実績を積み重ねてくるのは確実。「H3はこれからががんばりどころで、追い越されないよう、着実に成功を重ねていくことが重要だ」と話す。