【京本大我さん】主演映画『言えない秘密』公開中。彼が日々出会う、知らないことについて

AI要約

京本大我が演じる映画『言えない秘密』の主人公湊人について語る。音楽に没頭する彼の共通点や自己表現について述べる。

羞恥心を持たず、周りの意見に左右されない性格と、大好きなものに対するこだわりについて語る。

自身の小さなキャパシティや、大好きなものを濃度を薄めずに大切にする姿勢について述べる。

【京本大我さん】主演映画『言えない秘密』公開中。彼が日々出会う、知らないことについて

人生も、仕事も、恋愛も、「すべて知ってしまったらつまらない」。胸を高鳴らせながら走り続けたいから、もっと新しい自分に出会いたいから彼から見える世界はいつだって「知らない」と「知りたい」で彩られている。

僕が映画『言えない秘密』で演じている湊人は音楽大学に通うピアニストのたまご。留学先でトラウマを抱えてしまうんだけど、大学で雪乃に出会うことで心の傷が癒やされていくんです。湊人とは共通点が沢山あるように思えた。劇中に出てくる湊人の台詞に「サボり方を知らない」という言葉があるんですけど。音楽の世界でピアノに没頭して生きてきた彼は普通の男の子が経験していることを経験していなかったりして。夢を追いかけるのに夢中で、他のことには関心がないし知らないことが多い。それは僕と湊人の大きな共通点かもしれない。大昔の話になるけれど、この世界に入るまで僕はカップラーメンを食べたことがなかったし、その作り方も知らなかった。そのときも周りにひどく驚かれたけれど、今も「なんでそれを知らないの⁉」と周りを驚かせてしまうことがよくある。その原因は “興味のあるもの”と“そうじゃないもの”がはっきり分かれていて、興味のあるものに関する知識はぐんぐん入ってくるけどそうじゃないものは全く頭に入ってこない、その落差があまりにも大きいからなんだと思う。なかでも、ないがしろにしがちなのが日常生活に関する知識。例えば、タンパク質や炭水化物。忙しい毎日が続くと「健康のことも考えなくては」と栄養のバランスを取ろうと試みるけれど、どの食材にタンパク質や炭水化物が含まれているのか……何度聞いても、覚えられない。自分でも驚くほど覚えられない。なので、健康スイッチが永遠にオンにならず、結果「美味しいものを食べるのが一番の健康法だ」と諦めに近い理屈をこねて大好きなステーキ屋さんへと向かいひたすらに肉を貪り食べてしまうような僕なのです。

“品”において“羞恥心”は大事だと思うけれど、この仕事をするうえで、基本的に僕はあまり羞恥心を抱くことがない。周りから「おまえ、恥ずかしいな」と言われても全然平気。たとえそのときは恥ずかしかったとしても数時間後、数日後には誰も覚えていないし、たいていのことはいつか“ネタ”になると思っている。誰かに笑われたり、失敗することを恐れてやりたいことをやらない人生なんていらない。羞恥心もきっと僕にとっては「知らなくていいこと」でここにくるまでに切り捨ててきたのだと思う。周りから「どう思われるか」「どう見られるか」もまた僕にとっては「知らなくていいこと」。10代の頃は、全員に認められたかったし、愛されたかったし、売れたかったし、人気者にだってなりたかった。でも、今は全員じゃなくて数人でもいい、心にちゃんと刺さる音楽や表現を届けることが自分にとっての「かっこいい姿」なのだと気がついた。周りの目や意見に踊らされてしまうと本当に自分が求める幸せが見えなくなってしまうから「誰にどう思われようとも全然平気」な自分であり続けたいと思っている。

僕のキャパシティはとても小さい。音楽が好きだから新しいアーティストの曲を聴くのだけれど、新しい曲を覚えれば覚えるほど大好きなMr.Childrenの曲のタイトルがなかなか出てこなくなったりして。すると、悲しい気持ちになるんですよ。大好きなものが知らぬ間に薄まったり弱まっている気がして、寂しくなるんです。大好きなものは濃度を薄めずに抱え続けていたいと思っているからキャパの小さい僕は容量オーバーになった瞬間、無意識にいらないものを排除しているんだと思う。「これは知らなくても大丈夫だ」と。

●京本大我

1994年12月3日生まれ。SixTONESのメンバー。その表現力と歌声を生かしミュージカルでも高い評価が。8月からは念願の『モーツァルト!』に出演。また、ここ数年はドラマや映画でも大活躍。ドラマ『お迎え渋谷くん』や『霊験お初~震える岩~』が話題に。

『言えない秘密』

6月28日公開 ©2024「言えない秘密」製作委員会

心にトラウマを抱えてピアノ留学から帰国した湊人(京本)は音楽大学のキャンパスで雪乃(古川琴音)に出会う。ピアノを通じて心の距離を縮めていく二人。雪乃に惹かれていく湊人だが、ある日突然、雪乃が姿を消してしまう……。「ただの胸キュンではなく、心の深いところにまで響くラブストーリーになっていると思うので。多くの方に観てもらいたいです」(京本)

MAQUIA 7月号

取材・文/石井美輪 構成/萩原有紀(MAQUIA)