「日本にいる外国人」への政策は 国境管理と社会統合政策
日本の外国人受け入れ後の社会統合政策が不十分であることが指摘されている。
移民政策をとらない日本が外国人を受け入れることが問題となっており、改善が必要とされている。
日本の組織と協力した現地職員の受け入れ体制が整っておらず、迫害を受ける可能性が懸念されている。
外国人の入国をどうするかという国境管理と、入国した後、日本でどう暮らすかという二つの側面があります。国際基督教大学准教授の橋本直子さんに聞きました。【聞き手・須藤孝】
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――受け入れ後の政策はあまりみえません。
◆難民として受け入れられたわけではない、日本にいる一般的な外国人への社会統合政策は、長年ほぼなかったと言えます。
最近できた「特定技能」については、少し政策が進みましたが、一般的な外国人の受け入れ後の研修は、日本が長年やってきた難民への生活オリエンテーションの経験からもっと学べる部分があります。
今後、日本が外国人の受け入れを増やすのは既定路線です。しかし、受け入れ後の実態や日本社会への影響は十分把握されていません。
たとえば、外国人を入れると賃金が下がると言う人がいますが、明確な根拠はありません。まずデータが必要です。
◇居場所はあるか
――政策の空白ですね。
◆西欧諸国では長年の苦い経験を経て、難民でも一般的な移民でも、入国後に社会統合コースに参加することが、実質的に義務付けられている国がほとんどです。そのために、中央政府、受け入れ自治体、外国人本人の間で、きめ細かな仕組みが作られています。日本にはそのような工夫が欠けています。
日本でも外国人が多い自治体が求めているのは、国でしっかり予算をつけてほしいということです。
日本にいる外国人に対して政策的な支援がなければ、当然、厳しい状況におかれます。すると、国内から、「入国させるな」というような排外的な主張が出てきます。
国境をどう管理するかは、既に国内にいる外国人との共生がうまくいっているかが、おおいに影響します。日本社会のなかで外国人に居場所があり、そのことが国民にきちんと理解されることが重要です。
◇「移民政策はとらない」
――日本は「移民政策をとらない」ことになっています。
◆特殊な定義に基づく「移民政策」をとらない建前があるから、社会統合政策を長年やってきませんでした。「いつかは帰る出稼ぎ労働者だから」、国はなにもやらない、自治体や企業、NGOやNPOに任せておけというのが、この30年ぐらいの日本でした。
移民政策をとらないと言いながら、多くの外国人を受け入れることほど、最悪の政策はありません。欧州が1970年代から犯した過ちを繰り返してきました。
2018年ごろからようやく日本でも動きだしたかな、というのが現在地だと思います。
◇現地職員をどうする
――海外にある日本の大使館や国際協力機構、NGOなどで働いていた現地職員の退避と受け入れの態勢が整えられていません。
◆日本の組織と協力したために迫害を受けるおそれが高まるケースはアフガニスタンで問題になりましたが、今後も起きえます。
こうした人たちをどのような立場で日本に受け入れるかは空白状態です。これでは、優秀な現地職員は日本の組織では働かない方がよい、となってしまいます。一刻も早い整備が必要です。(政治プレミア)