災害廃棄物 復興遅れの要因に 南海トラフでも影響か 自立した防災体制を 4人の識者が語る 防災の日特集

AI要約

元日の能登半島地震で被災し孤立した能登地方では復興が遅れている。過疎化や脆弱なインフラが復旧・復興を阻んでおり、地籍調査の遅れや建物解体・廃棄物処理の問題も浮き彫りになっている。

災害廃棄物処理の遅れや支援物資の輸送優先により、復旧・復興工程が遅れている。特に建物内部の片付けごみの搬出や廃棄物処理作業者の不足が課題となっている。

被災家屋の数が増加している中で、適切な廃棄物処理や復興のためには、地域の状況や課題を十分に把握し、迅速な対応が求められる。

災害廃棄物 復興遅れの要因に 南海トラフでも影響か 自立した防災体制を 4人の識者が語る 防災の日特集

元日の能登半島地震で被災し孤立した能登地方では復興が遅れているとされる。こうした被害は南海トラフ地震でも起こると懸念されている。復興の遅れの要因や教訓をどう考えるかについて、環境地盤工学研究所理事長の嘉門雅史・京都大名誉教授、中野正樹・名古屋大院教授(土木工学)、中野教授と「AI等の活用による災害廃棄物処理プロセスの最適化と災害廃棄物の処理計画・処理実行計画の作成支援システム」を開発した建設会社「奥村組」の大塚義一・環境技術担当部長、矢守克也・京都大防災研究所教授(防災心理学)に聞いた。(聞き手 北村理)

■能登半島地震をどうみるか

嘉門 人口減少時代の災害の特徴が顕著だ。過疎化が進み、インフラが脆弱(ぜいじゃく)で復旧・復興を阻んでいる。空き家も多く、二次避難で被災者が地元を離れた。もともと、登記簿上の土地情報である地籍の調査が遅れており、持ち主の同意が必要な家屋解体を難しくしている。

地籍の調査率は石川県全体で15%、奥能登地区は1~数%。全国では東日本大震災で被災した東北3県の率は向上しているが、関東、中部、関西はほぼ10~30%にとどまる。南海トラフ地震など大災害が起きると、能登と同じ状況になると考えるべきだ。

大塚 地震で主要道路が寸断された上に、沿岸部が隆起し海上から被災地へ進人することも困難であったために、初動が遅れた。道路網が復旧しても、支援物資等の輸送が優先され、復旧・復興の工程を左右する災害廃棄物処理は後回しになった。

東日本大震災のように津波で建物が流された場合、初動の道路啓開の段階で、道路上のがれきは撤去と同時に仮置場へ搬出されるが、今回のように地震による建物倒壊の場合は、建物内部の片付けごみの搬出に時間を要するため、初期段階で仮置場へ搬出される廃棄物の量は少ない。建物解体や現地で廃棄物を分別する作業者が不足していることもあり、廃棄物処理がなかなか進まない。

なお、被災家屋は当初2万2000棟といわれたが、さらに増えるともいわれている。