1.5mmの虫をじっと観察する…紙オムツの要介護5の84歳直木賞作家が心震わせる「500円玉くらいの感動」の日々

AI要約

私は84歳で要介護5の車椅子生活を送りながらも、生きる糧を求めて様々な仕事に取り組んでいる。

体の限界に挑戦しつつも、パソコンを使い文章を書き続けたり、本を出版したりと精力的に活動している。

進行中の長編小説を執筆するなど、生きている間は少しでも前に進むことが大切だと感じている。

■生きているうちは少しでも前に進む

 私は、今年84歳です。要介護5の車椅子生活です。もう、明日死んでも変じゃない。しかしあるいは、これから4年か5年は生きるかもしれない。であれば、生きなきゃしょうがない。生まれるという現象には、「生まれたからには生き続けよ」という、無言のメッセージが含まれていると、私は解釈しています。

 そして、生きるためには、何か手立てを講じて、自分のやり方で、生きる糧を得なきゃしょうがない。生きる糧がなければ干上がっちゃいますからね。まずは、糧を得るための仕事があって、私の場合、その仕事が今では生き甲斐にもなっているように感じます。

 車椅子生活でも、私の場合は介護の人がつかなければ外出は不可能です。関節リウマチが悪化して、体の可動範囲はすごく狭い。ベッドから車椅子に移乗するのもひとりではできません。トイレに行くのも一苦労です。だから現在はオムツを使っています。

 それでも、体調のいいときは一日3時間くらい、パソコンの前に座って、左手一本でキーボードをポチリポチリと押して、文章をひねり出しています。そんな私ですから、ここ数年は、体の負担を考えて、大きな連載は整理しました。現在抱える連載は月に1度、デイリースポーツでのギャンブルに関するコラムです。これは今年で16年目に入りました。楽しんでやっているのであと半年や、1年ぐらいはやれそうかな、と思っています。

 あとは単発のエッセイなどを随時、書いています。また、X(フォロワー44万人以上)への投稿も毎日欠かしません。というのも、私の言葉で励まされている人が、少なからずいらっしゃるようなのです。そういう方々に、こんな自分でも役に立てているのかな、と思えるから続けています。

 一昨年は絵本も含めて、3冊の本を出版しました。昨年は1冊を上梓することができました。ただ、絵本以外は、私自身の人生から導き出した、どちらかというと自己啓発のような分野の書籍です。こうしたもの以外に、実は書きたいと思っている長編小説の構想も2、3本あります。

 作家としての人生を振り返ると、私はいろいろなものを書き飛ばしてきた人間です。原稿用紙で300~400枚の作品を、3、4日で書いていた時期もありましたよ。でも、今は小説というものに、じっくり腰を据えて取り組んでみたいと思っています。まぁ、そうでなくてもこんな体なので、執筆のスピードはゆっくりなんですけどね(笑)。一日に1枚とか2枚とか、具合の良くない日は2、3行のこともあります。それでも、3分の2くらいまで書き進めた長編小説があります。担当の編集者は、気長に待っているから少しでも書き進めてください、と言ってくれています。

 こうやって、生きている間は、1mmでも先へ進む。1行でも2行でもいい。少しずつでも進んでいくことが、私の心の糧になっているのです。