日銀が利上げに動いた今、「住宅ローン」を組むのはありか、なしか?…プロが導き出した「たった一つの答え」

AI要約

日本銀行が政策金利を引き上げ、住宅ローン金利も上がる可能性があることが話題になっている。

住宅地価や金利上昇、住まい方の変化などを考慮すると、住宅を買うタイミングは慎重に考える必要がある。

住宅を購入する際のタイミングは、局面によって価格や税制面での影響が異なり、悩ませる必要はない場合もある。

日銀が利上げに動いた今、「住宅ローン」を組むのはありか、なしか?…プロが導き出した「たった一つの答え」

日本銀行が7月29日の政策決定会合で、政策金利を0.1%から0.25%に引き上げた。

これをきっかけに日米の株価の大暴落を引き起こしたことが話題になっているが、国内経済への影響への懸念が広がったためだ。もちろん、そのなかに不動産取引も含まれる。

前編『日銀の利上げで「住宅ローン金利」も上がる!さて、いま「家は買うべきか、買わざるべきか」…難解な住宅事情をプロが徹底解説します!』にも記したように、政策金利が住宅ローンに影響することは、皆さんご存知だろう。

日銀の政策金利の引き上げを受け、都銀や信託銀行の多くは短期プライムレートを、年1.475%から1.625%に引き上げると発表した。短プラの引き上げは2007年3月以来、17年半ぶりとなる。

長期金利に連動する固定型金利は、大手銀行を中心に、変動型に先行して金利を引き上げていた。

また、2024年の公示地価は全国平均で2.3%上昇し、3年連続で増加。住宅地では2%、商業地では3.1%の上昇が見られ、特に都市部での回復が顕著である。

さて、いま住宅を買うのは、ありなのか、なしなのか。

筆者は約30年間、国内の戸建住宅事業に携わり、多くの住宅購入の現場を経験してきた。また、自身も二度にわたり住宅を取得し、住まい手の視点からも住宅を見てきた。

売る側と買う側の両方の立場から、日本の住宅市場がどのように変化するのか、そして個人にとって最大の買い物である住宅にどのように向き合うべきかを、できるだけ客観的に論じていきたい。

住宅を今買うか、いずれ買うかを考えるのには、今の住まい方とこれからの住まい方を考慮する必要があると筆者は考える。

例えば今賃貸住まいで、「いずれは持家に住みたい」と考える世帯があった場合の住宅購入のタイミングはどうだろう。

「賃貸で頭金を貯めてから住宅を買う」という考え方である。

今は頭金がなくても全額に近いローンを組めることもあるが、返済計画の健全性という意味でも、頭金が多いのに越したことはない。しかしながら、現在の住宅取得を取り巻く環境を考えると頭金を貯めるのは得策ではない。

なぜなら、頭金を貯めている間に地価や金利が上昇する可能性が高いからである。せっかく貯めた頭金を上回る金利負担があったり、住宅の値段が上がったりすれば貯めた頭金の意味がなくなる。

また、インフレによって貯金した頭金の価値が下がるとも考えられる(運用すれば別だか)。さらに、ローンを借りるのであれば、頭金を貯めている間に返済期間が短くなる(完済の年齢を同じとした場合)ため、早めに購入した方が総返済額を抑えられると言える。

すでに住宅を持っている世帯の買換えについては、どのように考えると良いだろう。

これまでのような住宅の価格が下落する局面であれば、保有の不動産は取得時から含み損を抱えているケースが多かった。しかしながら、下落局面では次に取得する住宅の価格も下がっているので、じつは負担感は少ない。

また税制面でも「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を使えば、譲渡損失を3年に渡って繰越控除出来るため、損失を所得税や住民税で補填できるケースもある。

この10年で都市部にマンションを保有していた場合などは、住宅価格の上昇により含み益が発生しているケースが多い。

この場合保有不動産の売却により、譲渡益が発生するが、次に買う住宅も値上がりしている。税制はこのような場合も想定しており「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」を受けることができるため、次の住宅を買いやすいと言える。

こうした状況を鑑みると、住宅を買うという行為はタイミングを選ばない。下落局面では「安く売って安く買う」上昇局面では「高く売って高く買う」ということにすぎないわけだ。住宅取得タイミングで、それほど頭を悩ませることはないのではないだろうか。