「暗証番号さえ知っていれば」は甘い…「認知症」の親の口座が凍結される前に、やっておくべき〈事前手続き〉【FPが解説】

AI要約

認知症になると金融機関の取引が制限され、財産が凍結される可能性がある。

金融機関は本人の判断能力が低下した場合、口座の取引を制限することがある。

事前に家族や介護者と相談し、金融機関や法務局などで代理人設定や手続きを行うことが重要である。

「暗証番号さえ知っていれば」は甘い…「認知症」の親の口座が凍結される前に、やっておくべき〈事前手続き〉【FPが解説】

認知症になると財産は凍結されてしまいます。金融機関の手続きは、本人でなければ行えないものが多く、最悪の場合、介護にかかる費用など介護者が負担しなければならない事態が起きてしまうのです。そのようなことになる前に、事前にできる対策はあるのでしょうか。本稿は、FP歴27年の安田まゆみ氏の著書『もめないための相続前対策: 親が認知症になる前にやっておくと安心な手続き』(河出書房新社)から、一部を抜粋して紹介します。

「認知症になると資産が凍結しますよ。金融機関から、お金が引き出せなくなります」とお伝えすると、必ず「金融機関は、どのようにして本人が認知症だとわかるのか?」という質問を受けます。

確かに、「私は認知症です」とゼッケンをつけて金融機関へ行くわけでもないですからね。認知症だということを、金融機関はどのようにして判断するのでしょうか?

認知症といっても、症状は様々です。ひとによって、日常生活でできることも違ってきます。

私のご相談者の例ですが、 ご相談者のお母様は、認知症と診断された後も、ひとりで金融機関の窓口でお金をおろすことができていました。金融機関は、自分で入出金や振り込みの手続きができている間は、特に何もいいません。

そのうち、通帳や印鑑、キャッシュカードの紛失が相次いで起きました。「暗証番号がわからなくなった」と、窓口で何度も繰り返すようになり、ほどなくして、金融機関は本人の判断能力が著しく低下したのではないかと判断して、口座を凍結しました。「生活費がおろせなくなった」と母親から電話があって初めて、ご相談者は母親の金融機関口座が凍結されたことを知りました。

この場合の金融機関口座の「凍結」は、相続が起きた際の「凍結」とは少し違います。口座の名義人が亡くなった場合の「凍結」は、金融機関がその人が亡くなったことを知ったタイミングで、その口座名義人の入出金、振り込みや口座引き落とし、通帳の記帳などのすべての口座の取引を止めます。

認知症で判断能力がかなり低下していると金融機関が判断した場合の「凍結」は、「口座の取引を大幅に制限する」ことです。入出金や振り込み、カード・通帳等の紛失・再発行、定期預金の解約・契約等の手続きができなくなります。ただ、口座引き落としや他からの振り込み(家賃の支払いや配当金を受け取るなど)は、銀行にもよりますが、そのまま続けられるところが多いようです。