話題沸騰のノンフィクション「リーマンの牢獄」私はこう読んだ…資本主義の病理は有象無象の「個人」に発する

AI要約

著者が資本主義の病理を描いた『リーマンの牢獄』が3刷となり話題を呼んでいる。本書は資本主義における欲望と嫉妬、そして個人の病理をリアルに描いている。

安東泰志氏は資本主義の世界での経験を通して、個人の欲望が社会貢献や理想と対立し、病理を生み出すことを語っている。

著者は投資ファンドを設立し成功を収めるも、欲望と策略によって乗っ取られ、結果として投資家に損失をもたらす事件が起きるが、新たなファンドで再出発し社会貢献を果たす。

話題沸騰のノンフィクション「リーマンの牢獄」私はこう読んだ…資本主義の病理は有象無象の「個人」に発する

齋藤栄功著『リーマンの牢獄』(講談社刊)が発売以来、たちまち3刷となって話題を呼んでいる。いったいこの本はどう読み解くことができるのか? ニューホライズンキャピタル取締役会長である安東泰志氏の意見を聞こう。

資本主義とは、人の欲望をあるがままに解放する弱肉強食のシステムである。カネや地位を巡って他人を踏み台に出来るものが勝者だ。嫉妬と猜疑心が渦巻く克伐怨欲の世界では、「世のため人のため」などという綺麗事は、人がその恥部を隠すイチジクの葉みたいなものになってしまう。

本書の主人公は、リーマンショックに至るまでの資本主義の病理に導かれた有象無象によって道に迷い、人生を棒に振るのである。

そのリーマンショックを経て、俄かにESGとかSDGsとかが連呼されるようになったが、あまりに皮相的だ。真の病理は資本主義に巣食う有象無象の個人の中にある。

銀行と投資ファンドという資本主義の世界に長く身を置いてきた私の「世の中の人々を幸せにしたい」「社会的意義がある仕事をしたい」という当初の志も資本主義の病理に翻弄され続けた。

私なりに青臭くも高い理念を掲げ、全財産を投じて起業した後、時機を得て三菱自動車や東急建設の再生をはじめ相応の社会貢献と高い成果を挙げることができていた投資ファンドは、僅かばかりのカネが欲しい有象無象、評判や報酬の高さを妬む元の職場(銀行)やコンサル会社の器の小さな連中の巧妙な策略によって乗っ取られ、事実上メガバンクの傘下に入れられ、私は有志と共に別の道に進んだ。

それから間もなく、そのメガバンクの実質的な指揮下で、そのファンドの投資家のカネを使って首脳陣同士が親密で多額の融資があったIT系上場企業の粉飾隠しが行なわれた結果、当該企業の倒産によって投資家に巨額の損失を与えることになる。

幸い別の道に進んでいた私たちは、その事件の前に立ち上げ直した新たなファンドが投資家の信認を得て社会貢献を果たせていると思うが、過去にこうしたことがなかったら、もっと早く、もっと大きな規模でそれが出来ていただろう。