死んだ「小さなトカゲ」が訴える飼い主への“望み” ブームの陰でにわかに増える病理解剖 死の原因は“飼い主の知識不足”という悲劇

AI要約

獣医病理医の中村進一氏が、人気の高まるヒョウモントカゲモドキについての印象的なエピソードを紹介。

飼い主からの死因調査依頼が増加し、脱水や腸閉塞などがよく見られる問題であることが明かされる。

痛風や腸閉塞の症状や原因について、病理解剖の結果を通じて詳細に説明。

死んだ「小さなトカゲ」が訴える飼い主への“望み” ブームの陰でにわかに増える病理解剖 死の原因は“飼い主の知識不足”という悲劇

飼っている動物が病気になったら、動物病院に連れて行きますよね。動物病院には外科、内科、眼科など、さまざまな専門領域の獣医師がいますが、獣医病理医という獣医師がいることを知っていますか? 

この記事では、獣医病理医の中村進一氏がこれまでさまざまな動物の病気や死と向き合ってきた中で、印象的だったエピソードをご紹介します。

■爆発的に人気が高まる「ある動物」

 「うちの子が亡くなった原因を調べてもらえますか?」

 ここ数年、飼い主さんからの直接、または動物病院を経由した「ある動物」の病理解剖の依頼がにわかに増えています。

 「ある動物」というのは、黄色やオレンジ色などの地にヒョウ柄模様が載った体色をした小型のトカゲ――ではなく、厳密にはヤモリの仲間で、ヒョウモントカゲモドキといいます。人気の女優さんが熱心に飼育していたというエピソードが報じられたこともあってか、近年ペットとして爆発的に人気が高まっている爬虫類です。

【写真】真っ黒、オレンジ、ピンク……。さまざまな品種(モルフ)が特徴のヒョウモントカゲモドキ。大人しく写真撮影に応じていたのが印象的(43枚)

 新型コロナ禍の巣ごもりの時期にSNSや動画配信サービスなどを介して多くの人に存在が知られ、それと同時に、獣医病理医であるぼくのところに、その遺体が持ち込まれることも増えました。

 「可愛がっていたのに、なぜ死んでしまったのかわからない。原因を知りたい」と悩む飼い主が大勢いらっしゃるのですね。いわゆる「爬虫類女子」というのでしょうか、深い愛情を注いでいたという女性から特に多く依頼をいただきます。

 ヒョウモントカゲモドキの死因で多いのは、温度や湿度が適切でないことや、うまく水を飲めないことなどによる脱水で起きた腎不全や痛風、それと、ケージに敷いた土などの異物を飲み込むことで起こる腸閉塞です。

 痛風では、遺体を病理解剖すると腎臓が腫れて大きくなっていたり、内臓の表面に白い尿酸塩の結晶を見たり、関節が腫れていたりするのを見て取ることができます。腸閉塞は、異物で腸がパンパンに膨らんでいたり、壊死(えし)を起こして赤くなった腸内に、異物が詰まったりしている様子が観察できます。