講談社元編集次長に有罪判決 妻への殺人罪 東京高裁の差し戻し審

AI要約

2016年に自宅で妻を殺害した元編集次長の差し戻し審が行われ、被告は懲役11年の判決を受けた。

公判では、検察側が他殺説を主張し、一方で弁護側は自死説を主張。争いが続いた。

長い裁判の中で証拠や主張が複雑化し、最終的に最高裁で再審が命じられた経緯があった。

講談社元編集次長に有罪判決 妻への殺人罪 東京高裁の差し戻し審

 2016年に自宅で妻(当時38)を殺害したとして、殺人罪に問われた講談社のコミック誌「モーニング」の元編集次長・朴鐘顕(パクチョンヒョン)被告(48)の差し戻し審の判決が18日、東京高裁(家令和典裁判長)であった。判決は、懲役11年とした一審・東京地裁の裁判員裁判の判決を維持し、被告側の控訴を棄却した。

 公判では、検察側の「他殺説」と弁護側の「自死説」で主張が対立した。

■他殺か自殺か

 検察側は、被告が子育てをめぐる口論から、妻の首を圧迫し、意識を失った妻が窒息死するまでの間に転落死に見せかけるために階段から落とした、と主張した。

 一方、弁護側は、産後うつなどで精神的に不安定だった妻が包丁を持ったため、被告が押さえつけた後、子どもとともに別の部屋に逃げている間に妻が階段の手すりで首をつって自死した、として無罪を訴えた。

 地裁は19年、血痕などの現場の状況から「自死の可能性は抽象的だ」として、懲役11年を言い渡した。ただ、地裁では裁判員裁判のために証拠が絞り込まれており、地裁が有罪の根拠とした現場の状況については提出されていない証拠があった。

 差し戻し前の二審・東京高裁は21年、これらの証拠も踏まえて「一審は前提を誤った」と認定したが、遺体の状況など一審とは別の根拠で自死説を否定し、控訴を棄却した。

 だが、高裁が判決の根拠とした遺体の状況については、二審で明確な争点とされておらず、検察側、弁護側ともに主張・立証をしていなかった。弁護側は「不意打ちの認定だ」と訴えて上告した。

 最高裁は22年、弁護側の主張を認め、「審理を尽くさなかった結果、重大な事実誤認をした疑いがある」と指摘。「双方に主張立証をさせることが必要だ」として審理を高裁に差し戻していた。

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