「マイナンバー制度はプライバシー権の侵害」 神奈川で原告集会

AI要約

マイナンバー(個人番号)制度をめぐる違憲訴訟の神奈川訴訟の原告団が最高裁への上告を求め集会を開催。

控訴審判決においてプライバシー権の侵害や個人情報保護委員会の機能不全に関する批判が展開。

情報連携の範囲の問題や判決の合憲性に対する疑問が提起されている。

「マイナンバー制度はプライバシー権の侵害」 神奈川で原告集会

 マイナンバー(個人番号)制度は憲法13条が保障するプライバシー権を侵害するとして、2015年以降に全国8カ所で市民が提起した違憲訴訟に関し、神奈川訴訟の原告団が5月30日、最高裁への上告に向けた原告集会を横浜市内で開催した。

 このマイナンバー違憲訴訟では最高裁が23年3月に名古屋、福岡、仙台での各訴訟に対して上告棄却判決を下した。他地区の控訴審判決が出る前の突然の判決だった。東京・神奈川での訴訟についてはこの最高裁判決前に結審していたが、それから実に1年以上経った24年3月25日に、東京高裁で棄却判決が言い渡された。翌4月には金沢、5月には大阪訴訟に対し、最高裁がそれぞれ全員一致で上告棄却決定を出した。

 そうした中で開催された今回の集会では、神奈川訴訟弁護団代表の小賀坂徹弁護士がまず同訴訟の控訴審判決に触れ「プライバシーをめぐり、本訴訟の中核である、自分の情報を誰とどこまで共有(シェア)するかを本人が主体的に決定できるという自己情報コントロール権には触れることなく、個人の情報は漏れなければいいとした60年前の解釈のまま」と批判。多発する漏洩事案については「国は『ヒューマンエラー』だとしてシステム上や法制度上の問題ではないとしているが、これほど漏洩事案が多発しているのは、むしろシステム上の欠陥そのもの。そうした原告の主張に対しても判決は国の主張をなぞった形式的な判断に終始してしまった」と解説し、原告が控訴審で強調した個人情報保護委員会の機能不全に関しても「表面的な判断にとどまり、まったく実態に立ち入っていない」と振り返った。

 情報連携の範囲が事実上白紙委任となっている恐れに関する意見書を提出した實原隆志・南山大学法科大学院教授も、判決について「そもそも利用範囲を限定しなくてもいいと言ってしまっている。『委任の範囲を超えるものとは認められない』としながら、その理由を述べていない。せめて限定していると明記したうえで合憲判断を出すべき」だったと指摘した。