「200円」でも嬉しい…認知症の人が痛感する、働くことの「重要な意味」…私らみたいな者でも使ってくれるのだったら

AI要約

認知症の利用者が掃除をして謝礼を得る介護事業所について

岡山市の取り組みを通じて、地域社会での介護や支援が必要な高齢者の活躍が促進されている

掃除活動を通じて、認知症の利用者が自信を深め、地域貢献への意欲を高めている

「200円」でも嬉しい…認知症の人が痛感する、働くことの「重要な意味」…私らみたいな者でも使ってくれるのだったら

 「(スーパーでお掃除するのは初めてですか? )初めてです。難しいですよ、やっぱり。普段しないことだから。なんかこの床も家とは違うし、難しいのは難しいですよ」(認知症の女性・81)

 「何かできることがあれば、参加しようかなということで。変わったことができて、いいですよ。日常とは違うことができて」(認知症の男性・54)

 認知症とその予備軍の数は、2030年にはお年寄りのほぼ3人に1人の1100万人を超えると言われている。そうした認知症の人も含めて介護や支援が必要になった人が働いて少しだが謝礼も得て活躍できる地域社会づくりが、岡山市で進んでいる。

 岡山市北区にある介護事業所「フィットネス デイサービス ステップス」。介護保険で介護や支援が必要と認定された人たちに通所介護、いわゆるデイサービスを提供している。

 ここの介護事業所は利用者の約半数が認知症だ。脈拍や血圧などの健康チェックを済ませると、認知症の男性利用者2人が、すぐ隣にあるフィットネスクラブに歩いて移動した。

 岡山市が3年前から始めた高齢者活躍推進事業「ハタラク」は、要介護となっても誰もが住み慣れた地域の一員として、自分の役割を持って暮らしていける地域社会づくりを目指している。

 趣旨に賛同する地域の企業や団体が、介護事業所に掃除や内職などを依頼し、デイサービスに来ていて希望する高齢者がその人の意欲と能力に応じて有償のボランティアをして、小額の謝礼を受け取るというシステムだ。

 健康な高齢者にはシルバー人材センターなどがあるが、介護や支援が必要となった高齢者には、これまで社会参加できる場が殆ど無かった。

 この介護事業所では、デイサービスの利用者のうち希望する人が、月に4回、フィットネスクラブの体育館やスタジオで窓や鏡、床などの掃除をする。1時間ほど掃除をして、謝礼は1人300円だ。参加した2人の男性利用者は、いずれも認知症だ。

 「少しでも元気なうちにもしお役に立てるのであれば、何か恩返しさせていただけたらと思いまして。ここでもお世話になりましたからね。皆さん、若い方が楽しんでいただいて、自由にやっていただくのであれば、そこを掃除させて貰えるのは非常に光栄だと思います」(元住宅メーカー営業マン・75)

 「(やってみたら身体とか心の調子も変わってきますか? )そうですね、やっぱり身体を動かすことはいいでしょうからね。(何に一番やりがいを感じますか? )みんなのためになることですかねえ」(歯科医師・54)

 掃除に付き添って来たデイサービスの看護師に、利用者が作業に参加する前と後でなにか変化があったかと聞いてみた。

 「自信を深められているということを感じます。他の方にも声を掛けて手助けをなさろうとされたりとか。やっぱり自信を持たれているということかなと思いながら、周りの方に気を遣ってあげられる様子を強く感じます」

 掃除が終わってデイサービスに戻ると、スタッフから謝礼が手渡された。

 「有難いです。これを恵まれない人のために寄附させていただきます」(元住宅メーカー営業マン・75)