「銀行よりも自宅のほうが安全だ」なぜ一部の高齢者は自宅に現金を隠すのか?

AI要約

高齢者が自宅に現金を隠す理由やそれに伴う問題点について報じられた。

隠された現金は相続の問題につながり、財産権の明確化や不測の事態に備えることが重要である。

高齢者の金融機関への不信感や認知症の影響などが、自宅に現金を保管する背景となっている。

「銀行よりも自宅のほうが安全だ」なぜ一部の高齢者は自宅に現金を隠すのか?

「銀行よりも自宅のほうが安全だ」

そう考えて、多額の現金を自宅に隠している人たちがいる。

この傾向は特に高齢者に多く、これが相続人の悩みの種になっていると、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。

その現金の保管の仕方は十人十色で、たとえばマットレスの下といった定番から「他界した祖父は、5000ドル(約80万円)をアルミホイルに包んで冷蔵庫に隠しており、冷蔵庫と一緒に危うく捨てそうになった」、「総額約1万ドル(約160万円)の現金を、自宅にあった無数の本の間に挟んで隠していた」など、さまざまなケースが報告されている。

この「故人が隠していた現金」に伴う問題は複数あり、家族間の紛争のリスクも孕んでいるという。

まず、自宅にある現金や貴重品は、盗難に遭ったり、火災などの災害で紛失する可能性がある。

また、現金を偶然見つけた相続人が他の人たちに内緒で「横取りする可能性もある」。

横取りが起きてなかった場合も、それなりの金額の現金が見つかったとなると「本当はもっとあったのではないか」などの不信感が生まれたり、既存の家族間の緊張が悪化する可能性もあるという。

さらに「故人が隠していた現金」は、遺産の分配を複雑にする。

「現金には所有権の明記がないため、財産権の観点からすると、現金が誰に属しているのかは非常に不明瞭です」と、米ウィルミントン・トラストのチーフ・ウェルス・ストラテジストは同紙に語っている。

裕福な家の場合は、隠された現金によって遺産が課税基準を超え、追加の税負担が生じる可能性も出てくる。

一体なぜ、一部の高齢者は自宅に現金を隠すのか?

同紙によれば、銀行を通じて資金にアクセスするよりも便利であると考え、旅行や緊急時にすぐに使える現金を好む人もいる。

ただ、高齢者が現金を自宅に保管している理由は、他にもいくつかあるようだ。

大恐慌や1930年代の銀行破綻を覚えている世代のなかには「金融機関に対する不信感がある」人も多く、お金を自宅に保管しておけば、銀行破綻やその他の金融危機による紛失や盗難から守られると信じている人も少なくないという。

さらに、歴史的に金融機関へのアクセスが制限されていた、または金融機関によって不当な扱いを受けてきた有色人種や少数派コミュニティは、当人だけでなく「世代を超えて金融機関に対する不信感を持ち続けている」ことも多い。

加えて、認知症やアルツハイマーなどの症状は、被害妄想や昔の行動、たとえば「若い頃は現金を自分で保管していた」などの行動への回帰を引き起こす可能性もあるようだ。

高齢者のこのような行動に気づいた場合は「なるべく早めに話し合うことが重要になる」と、専門家は述べている。