杉並・母子死亡事故「踏み間違い」元自動車整備士に禁錮5年求刑 遺族「憎しみや恨みはない」 安全対策には強い疑問

AI要約

東京都杉並区で歩道を歩いていた母子が、自動車整備工場から急発進した車にひかれて死亡する事故が発生した。

元整備士が過失運転致死罪で起訴され、初公判が行われ、検察は禁錮5年の求刑を主張している。

事故の経緯や被告の認識、車の状態などが明らかになり、判決は来月に言い渡される予定。

杉並・母子死亡事故「踏み間違い」元自動車整備士に禁錮5年求刑 遺族「憎しみや恨みはない」 安全対策には強い疑問

昨年12月、東京都杉並区で歩道を歩いていた母子が、道路に面した自動車整備工場から急発進した車にひかれて死亡した。この事故で車を運転し、過失運転致死罪に問われた元整備士・漆原宏太被告(51)の初公判が27日、東京地裁で開かれた。

検察側は禁錮5年を求刑し、弁護側は執行猶予付きの判決が相当だと主張。判決は来月19日に言い渡される。

上下黒のスーツにネクタイを締め法廷に現れた漆原被告は、じっと目を閉じ、沈痛な面持ちを浮かべていた。

検察の冒頭陳述によれば、昨年12月26日17時すぎ、被告は当時勤務していた杉並区高井戸東の自動車整備工場で車を後退させた際、本来はブレーキを踏むところ、アクセルを踏み込んで時速16kmに急加速させ、歩道を歩いていた母子をひいて死亡させた。

公訴事実について、被告は「間違いありません」と認めている。

事故を起こした車は、車検のために工場へ預けられていた。アクセルやブレーキに異常はなく、事故当時は8割ほどの作業が完了している状態だったという。

この工場では、タイヤの側面とホイールが傷つくのを防ぐために木製の板が設置されており、出庫する際はアクセルを踏み込んで板に乗り上げ、すぐにブレーキを踏んで停止させる必要があった。被告はこの日、整備した車を試運転するため出庫させようとしたところ、ブレーキを踏んだはずがエンジンの回転数が上がり、車は急加速で後退。サイドブレーキも引けるだけ引いたが止まらず、反対車線側に建つマンションの柵に衝突し、停止したという。

現場周辺の防犯カメラやドライブレコーダーには、車がブレーキランプを点灯させながら後退する様子が記録されていた。当時、この車のペダル付近にはフロアマットがかぶさっていた影響で、アクセルとブレーキのペダルを同時に踏み、アクセルにより強い力が掛かっていたとされる。また、被告は「アクセルからブレーキに踏みかえるとき、右足を十分に上げなかったかもしれない」とも振り返った。