F1ムラの逆襲! 米国での人気急上昇と高騰するチケット価格の真実とは

AI要約

F1における変革と進化の取り組みについての要約。予算上限の導入やPUのレギュレーション変更、2030年までにカーボン・ゼロを目指す方針など、進化の背景とその影響が示されている。

F1が量産車に反映させる技術や持続可能性への取り組みに焦点を当てた要約。車両の電動化、燃料供給量の制限など新たな規定が量産車に必要な技術に焦点を当てていることが述べられている。

F1が「走る実験室」としての役割を取り戻し、自動車メーカーからの関心が高まる可能性についての要約。ICEとバッテリー技術の進化が加速し、好循環が生まれる展望が示されている。

F1ムラの逆襲! 米国での人気急上昇と高騰するチケット価格の真実とは

 本連載「開かれたF1社会とその敵」では、F1の歴史と閉鎖的な構造に焦点を当て、変化の可能性を探る。F1の成長とともに形成された独自の「F1ムラ」における利益と利他の対立、新規チームの参入の難しさ、そしてオープンな社会への道筋を検証する。F1の未来と進化に向けた具体的な可能性を示し、閉鎖的な構造からの脱却戦略を提案する。

※ ※ ※

 F1のことを「F1サーカス」と呼ぶことが多いが、本連載では、実際に閉鎖的な面があるため「F1ムラ」と表現している。ファンに見放された場合、たとえモータースポーツの最高峰であっても存続できるかは不明だ。

 一方で、F1はプロスポーツとしてファンに支えられており、ファンの支持を得るために、より開かれた存在に変革しようと努力してきた。では、これまでにどんな取り組みがあり、どのような影響をもたらしたのか。

 F1も一般企業と同じで、持続可能なビジネスモデルを構築しなければ未来はない。そのことはF1関係者も理解しており、自ら変わる努力をしてきた。近年の大きな変革のひとつとして、

「予算上限の導入」

が挙げられる。F1は世界最先端の技術を駆使し、大量の資金が必要な競技だ。無制限にすればチーム間の格差が広がり、一部のチームは存続が難しくなる可能性があった。

 その結果、2024年のF1開幕戦バーレーンGPでは、予選Q1でトップから最下位までのタイム差が約1秒という接戦が実現し、少しのミスで順位が2、3番下がるほどマシン性能の差が縮まった。功罪の「功」が罪を上回った。

 パワーユニット(PU)のレギュレーション変更も同様で、F1はその時代に応じた安全性や要請に基づいて、エンジンやPUのルールを頻繁に見直してきた。

 現代では、温暖化対策として二酸化炭素の排出削減が求められている。

 国際自動車連盟(FIA)は2019年に、2030年までにカーボン・ゼロを目指す方針を発表した。この目標に基づき、2026年からのPUでは、電動化の割合が約2割から5割に引き上げられる予定だ。また、内燃機関(ICE)への燃料供給量は2020年の100キロから、60~70キロに制限される見通しだ。

 ガソリンの消費量が減るという事実は大きな意味を持つ。世界の自動車メーカーが電気自動車(EV)の販売戦略を見直しているとはいえ、依然としてガソリンを燃やして二酸化炭素を排出する内燃機関(ICE)中心のレギュレーションでは、モータースポーツの最高峰としてサステナビリティへの取り組みが不十分だと批判されかねない。これは時代が求めた新しいレギュレーションだ。

 かつて、

「走る実験室」

と呼ばれ、モータースポーツで培った技術が量産車に反映されてきた。しかし、F1が速さを追求するあまり、量産車に応用できる技術が少なくなり、その存在意義が薄れつつあった。しかし新たな規定は、量産車に必要な技術に焦点を当てているため、F1が「走る実験室」としての役割を取り戻し、自動車メーカーからの関心も高まっている。これにより、ICEとバッテリー技術の進化が加速し、量産車にフィードバックされるという好循環が生まれる。

 ただし、100%電動化についてはフォーミュラEという別のカテゴリーがあるため、F1からICEが完全になくなることはない。そのため、ハイブリッド技術がさらに進化する可能性が高い。