40代以上のベンチャー転職、なぜ増加?自動車や家電など大企業から続々「60歳過ぎても力強く働ける」

AI要約

近年、40歳以上のミドル・シニア層がスタートアップに転職する現象が増加している。

スタートアップには大企業に匹敵する報酬や柔軟な働き方が提供され、年齢を問わず多くの人材が流入している。

特にミドル・シニア層は大手企業からの転職者が多く、実力や強みを発揮できる環境でやりがいを持って働くことができるとされている。

40代以上のベンチャー転職、なぜ増加?自動車や家電など大企業から続々「60歳過ぎても力強く働ける」

「スタートアップは若者ががむしゃらに働く場所」というイメージはもう古いのかもしれない。17日にリクルートが発表した調査によると、40歳以上のミドル・シニア層でスタートアップに転職する人が増えているのだ。

早期退職や希望退職を募る日本企業が相次ぎ、労働市場の流動性をどのように高めるか頻繁に議論される昨今。キャリアの終盤に向け、中年世代の模索が始まっている。

リクルートが同社の転職支援サービス「リクルートエージェント」におけるスタートアップ(ここでは株式未公開で設立10年以内かつ大企業の関連企業ではない企業とする)への転職者数の推移を調べたところ、実数は非公開だが、2015年度を1とすると、2022年度は2.6倍、2023年度は3.1倍に増えていた。

求人数も同じく2015年度を1とすると、2022年度が7.2倍、2023年度が6.8倍となっており、同社のスタートアップ専任コンサルタントの新堂尊康さんは「スタートアップの人材へのニーズに、転職者数が追いついていない状況」だと言う。

「スタートアップに抱かれがちなイメージと実情は異なります。大企業に遜色ない報酬を支払う企業も多くなっており、柔軟な働き方を実現して優秀な人材を迎え、定着を図る企業も増えています」(新堂さん)

実際、転職時に提示された年収を比較すると、2015年度は約7割を占めていた「400万円未満」が2022年度は4割に減り、代わりに25%しかなかった「400万円以上600万円未満」が40.2%に増えていた。

SO(ストックオプション)を付与する企業も多く、「スタートアップで働く金銭的な魅力の一つになっている」(新堂さん)そうだ。

多くの人材が流入するスタートアップだが、転職者数を年齢別に見ると、さらに興味深いことが分かる。2015年度を1とすると、「20~39歳」は2022年度は2.4倍、2023年度は2.7倍となっているのに対し、「40歳以上」のミドル・シニア層はそれぞれ5.4倍、7.1倍と顕著に伸びていた。

背景について新堂さんは言う。

「大手企業では50歳を過ぎると、役職定年や配置転換により、やりがいを持って働くことが難しいと感じる方が多くいらっしゃいます。それに対してスタートアップは、自身の実力・強みが発揮できる環境であれば、やりがいを持って長く働くことができる環境だと言えます。

スタートアップでは60歳を超えても力強く働いている方がたくさんいます」(新堂さん)

多いのは、大手自動車企業や大手家電メーカーの出身者が、自動車関連、宇宙、IoT、AI、量子関連のスタートアップへ転職するケースだという。

前職での役職はさまざまで、多くは一般的な量産開発部門だが、研究色の強い大学発スタートアップでは、大手のR&Dからの転職者が多数いるそうだ。