米景気の先行指標「ISM製造業景気指数」の悪化が株価下落の要因に 相場回復の鍵を握るFRBの金融政策、「ハードランディング」を回避できるか【9月17~18日のFOMCに注目】

AI要約

米国の主要株価指数S&P500が9月第1週に4.25%の下落を記録し、景気後退への懸念が高まっている状況を解説。

景気後退の定義やNBERによる判断基準、経済指標の重要性などについて説明。

先行指標であるISM製造業景気指数の悪化が株価下落の要因となっており、景気動向の早期把握が重要であることを示唆。

米景気の先行指標「ISM製造業景気指数」の悪化が株価下落の要因に 相場回復の鍵を握るFRBの金融政策、「ハードランディング」を回避できるか【9月17~18日のFOMCに注目】

 米国の主要株価指数であるS&P500は、9月第1週に4.25%の下落を記録し、再び景気後退への不安が高まっている。今後の米国市場をどう見ればよいか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんによる、シリーズ「まるわかり市況分析」。森口さんが解説する。

 * * *

 アメリカの主要株価指数であるS&P500は、9月第1週に4.25%の下落を記録しました。これは、2024年に入ってから最大の値下がりとなっています。アメリカでは再び景気後退への懸念が高まっていますが、株安はこの先も続くのでしょうか。今回は、景気後退と、その鍵を握る経済指標について確認をしてみましょう。

 アメリカでは、実質GDP(国内総生産)が2四半期連続でマイナス成長となると、景気後退と見なさます。この現象は「テクニカル・リセッション」と呼ばれますが、正式な景気後退と必ずしも一致するわけではありません。

 景気後退の判断は、全米経済研究所(NBER)によって行われます。NBERは景気後退を「経済全体にわたり、数ヶ月以上続く顕著な経済活動の低下」と定義しており、判断の際には深さ、広がり、期間に加え、実質個人所得や非農業部門の雇用者数など、複数の経済指標を総合的に考慮して判断しています。

 2024年8月29日に発表された4~6月期のGDP改定値は、速報値の2.8%増から3.0%増に上方修正されています。

 アメリカのGDPはまず速報値が発表され、その後改定値、確定値の発表と続きます。

 次回の4~6月期確定値は9月26日に公表予定ですが、よほどのことがない限りマイナス成長へ修正される可能性はかなり少ないでしょう。

 注目すべきは、10月30日に発表される7~9月期の速報値ですが、もしこの数値がマイナスとなった場合でも、まだテクニカル・リセッションに入るわけではありません。

 国内総生産(GDP)は経済の状態を示す非常に重要かつ正確な指標ですが、膨大なデータを扱うため発表までに時間がかかり、確定までに修正が続くこともしばしばです。そこで、早い段階で景気の動向を把握するためには、先行指標に注目することが重要です。

 その中でも「アンケートデータ」は発表までのタイムラグが少なく、先行性が高いといえます。代表的な先行指標としては、ISM製造業景気指数、PMI(購買担当者景気指数)、そして雇用統計があり、これらのデータは景気の変動を早期に捉えるための有力な情報源といえるでしょう。

 ISM製造業景気指数は、製造業の景況感を測る重要な指標です。400社以上の企業の購買担当者へのアンケート調査をもとに算出され、毎月の第1営業日に発表されるため、他の経済指標に先駆けて景気の動向を掴む手掛かりとなります。

 この指数は、新規受注、生産、雇用、納期遅延、在庫の5つの要素から構成され、50を上回ると経済が拡大していることを示し、50を下回ると経済が縮小していることを示します。

 2024年は9回の発表がありましたが、拡大圏である50を超えたのは3月分だけです。製造業は景気の「川上」に位置する産業であり、その点からもさらに先行性の高い指標として注目されていますが、2024年は縮小圏がかなり続いているのです。

 また、特に最近このISM製造業景気指数が市場の注目を集めています。というのも、8月と9月の株価下落の引き金となったのは、この指標の悪化が大きな要因とされているためです。