【米国株ウォッチ】年初来35%安のボーイング、悪材料出尽くしで割安と言えるか?

AI要約

ボーイング株価が急落し、格下げの影響で悪化。新たな資本調達の必要性が浮上。

株価のバリュエーションは上昇余地があるものの、成長には時間がかかる見通し。

ボーイングの収益は減少傾向にあり、今後の業績に影響を与える可能性がある。

【米国株ウォッチ】年初来35%安のボーイング、悪材料出尽くしで割安と言えるか?

ボーイング(ティッカーシンボル:BA)の株価は米国時間9月3日の取引で7%下落し、4%下落した同業のエアバスよりも悪い結果となった。

直近のボーイング株の下落は、主にウォール街の著名な調査会社が最近行った格下げに起因している。同社は、米連邦航空局(FAA)がボーイング製航空機の安全性調査に乗り出したことで増産が認められていない現状に苦しんでおり、それを反映した結果だ。ボーイング株を格下げしたアナリストは、100億ドル(約1兆4376億円)という同社のキャッシュフロー創出目標が、2年ほど遅れる可能性があると主張した。

さらに、同社は新製品開発のために300億ドル(約4兆3129億円)の新たな資本を調達しなければならない可能性があり、すでに450億ドル(約6兆4684億円)もの巨額の負債をバランスシートに抱えていることを考えると、これは難しい課題だ。

■株価パフォーマンス

ボーイング株は2021年1月初旬につけた約215ドルから、現在の160ドル前後の水準まで、約25%下落している。過去3年間のリターンは、2021年にマイナス6%、2022年にマイナス5%、2023年に37%であり、2021年にS&P500種株価指数のリターンを下回っている。

バリュエーションの観点からは、ボーイング株には十分な上昇余地があるように見える。私たちは目標株価を現在の160ドルより30%以上高い、210ドルとしている。この目標株価は株価売上高倍率を1.6倍としたものであり、これは過去5年間における平均倍率の2.0倍より若干低い。FAAによる調査や、それが同社の短期的な収益性に与える影響を考慮すれば、過去平均よりも低い倍率を適用することは妥当だと思われる。

■直近の決算動向

ボーイングの年間収益は、2020年の582億ドル(約8兆3600億円)から2023年の778億ドル(約11兆1800億円)へと年平均10.3%のペースで増加した。世界的な旅行者数の増加に伴い、航空機に対する需要は膨大であり、この傾向はすぐには変わらないだろう。しかし、航空機メーカーは顧客への納入時に収益の大半を計上するため、ボーイング機の納入の遅れは同社の収益に打撃を与えている。

同社の今年上半期の収益は、前年同期比11%減の334億ドル(約4兆8000億円)だった。また、営業利益率は3.1ポイント悪化し、マイナス5.3%となった。減収と利益率の悪化により、1株当たりの純損失は4.04ドル(2023年上半期は2.08ドルの損失)に膨らんだ。私たちの予想では、2024年の年間収益は約760億ドル(約10兆9244億円)、調整後の1株当たり純損失は3.55ドルになると予想している(2023年は、年間収益780億ドル、1株当たりの純損失5.81ドルだった)。

ボーイングの株価はバリュエーションの観点からは魅力的に見えるが、同社が力強い成長トレンドに戻るにはしばらく時間がかかるだろう。同社は7月に25機の航空機を製造し、2024年末までに38機まで増やす計画を立てている。しかし、同社がこの目標を達成するのは2025年になる可能性もあるだろう。遅れが長引けば長引くほど、同社の収益性に重くのしかかる。ボーイングは厳しい局面を迎えているが、株価は今年に入ってから約35%下落しており、悪材料の多くはすでに織り込み済みであると私たちは考えている。