日経平均、“1,600円超の大幅安”も「過度な悲観は不要」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】

AI要約

日経平均株価が米景気不安や米ハイテク株安、ドル安・円高により大きく下落し、8月の急落時と同様の状況となっている。

8月5日以降の急反発は主にPERに支えられており、EPSの上昇が持続的な株高には不可欠である。

日経平均は長期上昇トレンドを維持しており、目先の不安要因に過度に悲観する必要はない。

日経平均、“1,600円超の大幅安”も「過度な悲観は不要」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】

チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。

●日経平均の下げは米景気不安、米ハイテク株安、ドル安・円高が主因で、8月急落時と変わらず。

●8月5日以降の急反発はほぼPERによるもので、安定的、持続的な株高にはEPSの上昇が必要。

●目先米景気などの好材料待ちも日経平均は長期上昇トレンドを上抜け中で過度な悲観は不要。

9月4日の日経平均株価は前日比1,638円70銭(4.2%)安の37,047円61銭で取引を終えました。前日の米国市場で、米サプライマネジメント協会(ISM)の8月製造業景況感指数が市場予想を下回り、米国景気の先行き不安が強まったことに加え、米半導体大手エヌビディアの株価が急落したことから、国内市場では値がさの半導体関連株中心に売りが広がり、日経平均を大きく押し下げる格好となりました。

日経平均の不安定な動きの根底には、「(1)米国景気の先行き不安」があり、それに起因する形で「(2)米ハイテク株の下落」と「(3)ドル安・円高の進行」が重なり、9月4日の日経平均の大幅な下落につながったと推測されます。実は、この状況は8月に入ってみられた日経平均の歴史的な急落と同じであり、この時は海外投機筋による先物の売り主導で下げ幅を拡大しましたが、今回も海外投機筋の先物売りが影響した可能性が高いとみています。

テクニカル分析の1つである「フィボナッチ・リトレースメント」をみると、日経平均は7月11日高値から8月5日安値までの下げ幅について、8月16日時点で61.8%戻しの水準まで到達しました(図表1)。日経平均はその後、しばらく同水準近辺での揉み合いを経て、9月2日に一時39,000円台をつけました。そこで、日経平均の予想ベースの1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)に注目してみます。

8月5日の日経平均は31,458円42銭、EPSは2,416円16銭、PERは13.02倍で、9月2日は順に38,700円87銭、2,438円62銭、15.87倍でした(終値ベース)。この間、日経平均は7,242円45銭上昇しましたが、ほとんどがPERの上昇によるものでした。急速に値を戻した日経平均ですが、やはり安定的、持続的な株高には、良好な業績見通しを反映したEPSの上昇が必要と思われます。