将来的な南海トラフ地震で注意すべき「半割れ」地震の連発 後発の被災地では充分な救援や支援ができなくなる懸念

AI要約

8月15日に消えた「巨大地震注意」の文字、南海トラフ地震の脅威、科学的なデータに基づく警戒など、日本列島に迫る災害のリアルな状況が語られた1週間。

南海トラフ地震の切迫性、M7.1の日向灘地震から垣間見えるリスク、最大M9.1の巨大地震の予測、専門家による警鐘など、国民への異例の警戒対応の背景を解説。

地震の連続発生確率から見える災害リスク、過去の地震データに基づく解析、長期的な備えの必要性など、南海トラフ地震に備えるための科学的なアプローチが示された。

将来的な南海トラフ地震で注意すべき「半割れ」地震の連発 後発の被災地では充分な救援や支援ができなくなる懸念

 テレビ画面に表示され続けた「巨大地震注意」の文字が、8月15日に消えた。日向灘(宮崎県)を震源とする地震が発生してから、日本列島に暮らす人々に、迫り来る「南海トラフ地震」の恐怖がかつてないぐらいリアルに突きつけられた1週間だった。

「政府としての特別な防災対応の呼びかけは終了する」

 松村祥史防災担当大臣は会見でそう語ったが、地震の危機が去ったわけではまったくない。多くの人が近い将来、間違いなくやってくる巨大地震の脅威を肌で感じたいま、より詳しい情報と知識を得て、未曾有の災害に備える必要がある。

 8月8日午後4時43分頃、日向灘を震源とするM(マグニチュード)7.1の地震が発生した。宮崎県日南市では最大震度6弱を観測し、同市の沿岸では40cmの津波を確認。宮崎港には最大50cmの津波が到達した。

 日向灘は南海トラフの西端に位置する。その日、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(注意)」を初めて発表した。

 長年の脅威とされてきた南海トラフ地震は、今後30年以内に70~80%の確率で起こるとされ、その規模はM8~9クラスと超巨大だ。100~150年の間隔で繰り返し発生しており、現在は前回の南海トラフ地震(1946年の昭和南海地震)から78年が経過している。今回の日向灘地震は、南海トラフ地震発生の切迫性が高まっていた最中での出来事だった。

 気象庁は地震活動などに特段の変化が見られないとして、地震発生から1週間後に臨時情報の呼びかけを終了したが、リスクが去ったわけではない。そもそもなぜ「1週間」なのか。それは科学的に地震が発生しやすい期間というわけではなく、「人々が地震に注意しながら生活できる限界」を調査して設定されたものだ。専門家による「評価検討会」の平田直会長が指摘した「(地震発生の確率が)数倍高くなった」状況に、しばらく変わりはないのだ。

 今回の日向灘地震はM7.1にとどまったが、南海トラフ地震の最大Mは9.1と想定されている。今後M8クラス以上の南海トラフ地震が発生すれば、悪夢が日本列島を襲う。東北大学災害科学国際研究所准教授の福島洋氏が解説する。

「南海トラフ地震には、過去には想定震源域の広範囲が同時にずれ動く『全割れ』と、紀伊半島を境に東西のどちらか半分がずれ動く『半割れ』がありました。半割れ地震の場合、先に発生した地震からしばらく時間を空けて、もう片方で再び地震が発生する可能性が高いです。1361年以降、南海トラフ地震は6回発生していますが、そのうち2~4回が半割れの連発でした。半割れが怖いのは、地震や津波で大きな被害が出ている地域の救出や支援、復旧活動をしている間に再び激しい揺れや津波に襲われること。後発の地震の被災地では、充分な救援や支援ができない可能性があります」

 福島氏ら東北大学などの研究グループは、世界で過去に発生したM7以上の地震およそ1500回分の統計データと、1361年「正平東海地震」以降の南海トラフにおける地震の発生履歴をもとに、「半割れ」の地震が連発する確率を算出。南海トラフでM8以上の「半割れ」地震が起きた後に、同程度の地震が起きる確率が「平時よりどれだけ高まっているか」を導き出した。

「1日以内に連続して大地震が発生する確率は1.4~64%で、平時に比べて460倍から2万1000倍に跳ね上がります。1週間以内に連続する確率も、2.1~77%と平時と比べて99倍から3600倍に。2週間以内では最大2000倍、1か月以内になると最大910倍と倍率こそ下がりますが、それでも平時に比べれば充分に高い数値で、長期間の備えが必要だということが言えるのではないでしょうか」(福島氏)