南海トラフ地震に備えて「原発の安全性」を総点検 想定震源域の浜岡原発・伊方原発、日向灘に位置する川内原発の現状とリスクを専門家が分析

AI要約

政府が史上初となる南海トラフ地震臨時情報を発表し、地震への備えが意識されている。

南海トラフ地震のリスクや原発への影響、放射性物質のリスクについて詳細に説明。

個別の原発における安全設備や放射性物質の段階的リスクについて解説。

南海トラフ地震に備えて「原発の安全性」を総点検 想定震源域の浜岡原発・伊方原発、日向灘に位置する川内原発の現状とリスクを専門家が分析

 宮崎県日向灘を震源とするM7.1の地震をきっかけに、政府が史上初となる南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表、改めて震災への備えが意識されている。

 巨大地震によるリスクといえば、多くの人は福島第一原発のメルトダウンを思い浮かべるだろう。

 南海トラフ地震の最大規模はM9と想定されている。その「想定震源域」内に立地するのが浜岡原発(静岡県)と伊方原発(愛媛県)。加えて今回のように日向灘が震源となった場合、川内原発(鹿児島県)への影響が指摘されている。

 どのくらい危険なのか。

 今年1月に起きた能登半島地震(最大震度7)では震源から約70キロ離れた志賀原発(石川県)が「震度5強」に見舞われた。使用済み核燃料プールの冷却水が溢れ、原子炉を稼動させる変圧器が損傷して油が流出、外部電源も1系統が使用できなくなった。ただ、同原発は2011年から停止中で、深刻な事故には至らなかった。

 地震による原発リスクに備えるには、個別の原発の状況と、具体的にどんな事故が起きる可能性があるかを知り、“正しく怖がる”必要がある。

 しかし、今回の「巨大地震注意」で大メディアは、各電力会社が対策本部を設置したことなどを報じる程度で、個別の原発の状態を詳細に報じない。本誌・週刊ポストは南海トラフ地震で懸念される3か所の原発のリスクを調査した。

 まず、地震による原発への影響は、激しい「揺れ」による直接的被害と、その後の「津波」による被害の可能性を分けて考える必要がある。

 元原子力規制庁緊急事態対策監の山形浩史・長岡技術科学大教授が語る。

「原発の施設は、原子炉・放射性物質の安全を確保するために重要な安全設備(Sクラス)、安全には関係するが発電所外にはほとんど影響を与えない安全設備(Bクラス)、安全上はなくても大丈夫な一般産業用と同じような設備(Cクラス)に分類されます。

 Sクラスは原子炉、非常用冷却設備、非常用発電機などで、想定される地震・津波で壊れないよう設計します。一方、外部に送る電気を作るための発電機、変圧器、送電線などは大地震に襲われると壊れる場合がある。送電ができず一般家庭は停電になるかもしれないが、原子炉の安全そのものには影響ありません」

 原発の放射性物質のリスクにも段階がある。

「原子炉で使用中の核燃料は原子炉を停止してもすぐに冷えず、熱を発し続けており、冷却ができないと福島第一原発事故のようになります。一方、プールで保管中の使用済み核燃料は相当冷えているので、週単位、ものによっては年単位で放置しても大丈夫です。洗浄水など液体の低レベル放射性廃棄物は、地震でタンクから漏れることがあるかもしれません。固体の低レベルの放射性廃棄物は、津波で流されない限り問題はありません」

 これを踏まえて3か所の原発の現状を見ていこう(図参照)。